体育祭-4-
お昼を終えてから4人はグランドへ戻った。
汰絽と好野は軍団で置かれた椅子のもとに戻り、杏と風太は次のダンスパフォーマンスのため着替えに自分の教室へ向かう。


「先輩のとこ、どんななのかなぁ」

「ぼんやりと言ってたけど、吸血鬼をイメージにしてるらしいぞ。パネルもそうだしね」

「吸血鬼な風太さん…!」

「春野先輩たちも衣装着るかわからないけどな」

「そっかー」

しょぼん、という顔文字が見えそうな汰絽に、好野はまた来年楽しみに、と微笑む。
ふたりが話していると、中間発表のアナウンスがかかった。
現在の1位は風太と杏のいる青軍だ。
2位は体育科の黄軍。
3位が汰絽と好野の赤軍。
4位が工業科の緑軍、5位が芸術科の紫軍、6位が普通科の白軍になっている。


「3位かー!」

「ま、次から頑張ろうぜ。総合優勝目指すぞー」

「おー」

ふたりだけで小声の気合いを入れる。
顔を見合わせて笑みを浮かべていると、青軍が入場してきた。
まるで西洋を彷彿とさせる音楽が流れ始め、汰絽達は目を輝かせる。


「背筋がぞわっとした!」

「うおーっ、かっけえっ!!」

「あっ、バク転」

「あれ! 杏先輩じゃん」

「すごい!! すごいねっ、よし君、ムービー!!」

「おう」

好野が携帯で動画を取るのを見て、汰絽はあ、と自分も携帯を持っていることを思い出す。
スーツ姿の生徒たちが踊るのを見て、汰絽はひとり風太を探した。
携帯の電源を入れながら風太を探していると、杏の隣で踊る風太を見つける。


「風太さん!!」

「ん?」

「風太さんいたっ。ふおおっ、かっこいい!! よし君っ、かっこいいよー!!」

思わず立ち上がってしまうと、後ろから笑い声が聞こえてきた。
汰絽ちゃん、落ち着けよ、と声をかけられ腰を下ろす。
かあっと頬が熱くなるのを感じた。
風太を見ると、いつも気怠そうな雰囲気なのに、生き生きとしている。
そんな姿も、かっこいいな、と思いながら、汰絽は携帯を風太に向けた。


いつの間にか青軍の演技が終わっていて、次は汰絽達の順番が来た。
軽く衣装に着替えるため、赤軍の生徒はグランドのすぐそばの教室に入って着替える。
赤軍は戦国時代をイメージしていて、軍団の幹部の人たちは甲冑を着て踊るらしい。


「どう? 似合うかなー」

「似合う似合う」

下級生は浴衣を羽織り、足首にしゃらしゃらと音がなるアンクレットをつける。
それから個人で用意した下駄に履き替えてグランドへ向かう。
汰絽と好野はお互い褒め合いながら列についた。


最初は静かな琴の音から入る。
しんとしたグランドにしゃらしゃらと足につけた装飾が音を鳴らし、太鼓の大きな音が響いた。
激しい音楽に合わせて、踊る。
何回も聞いた音楽と、上がる息に汰絽は思わず笑みをこぼした。
その笑いに気付いた好野も隣で楽しそうに笑みを浮かべた。


「ふ、ははっ、よし君上手!」

「汰絽もな。練習、したかいがあるなっ」

陣形を作るために移動している時に、木陰にいる白い頭と桃色の頭を見つける。
汰絽はもう一度、好野に笑いかけた。



「よし君わかりやすいな。意外とダンス上手だし」

「ああ、すぐに見つかった。あいつらどっちも上手いな」

「ふふ、あのふたりは意外性に満ちてるからねぇ」

風太が軽く笑う様子を見て、杏も笑う。
こんな風に優しく笑う風太をなんとなく嬉しく思った。


「はるのん、最近機嫌いいよね」

「あ?」

「べっつにー」

にやにやとする杏の背中を叩いて、風太は木に背中を預けた。
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