体育祭-2-
100メートル走を終えてから、パン食い競争、米騒動など、いろいろな競技が行われていく。
午前中のテンションの高さは興奮もまじっているのか、ざわざわとしている。
汰絽たちは風太たちが出た100メートル走の時にいた位置から少しずれて観覧していた。

ぼんやりと空を眺めたり競技を眺めていたら、綱引きの招集がかかった。
隣の好野が立ち上がって、汰絽の頭を撫でる。


「じゃ、行ってくる!」

「よし君頑張って!」

「おう!!」

勢い良く返事をした好野は駆け足で召集場所へ向かっていった。

汰絽は綱引きを一番見やすいところに行き、小さくしゃがんで召集場所を眺める。
杏と好野が親しげに話している姿が見える。
じっくりと見つめると、その奥で壁に寄りかかっている風太が見えた。
あ、風太さん。
風太は携帯を弄っているようで、汰絽は小さく笑った。

風太の様子を眺めているうちに、綱引きの選手がグランドに入場してきた。
駆け足で入場している選手の後ろを風太も軽く走っている。
こういう時はちゃんと走るのか、と思わず笑ってしまった。
風太をじっと見ていたら、目の前を通るときに風太が汰絽にひらひらと手を振っていた。


「あ…! 今、春野先輩、手振ってたよ! 誰にかなぁ!!」

「僕かな」

「お前の分けないだろー」

女子のような会話が耳に入ってくる。
ごめんね、多分、僕に手を振ったんだと思います。
汰絽はそう思いながら、小さく風太に手を振り返した。
風太をじっと見つめると、笑みを浮かべているのが見える。

ふいにキュン、と胸が締め付けられた。
どうしたことか、心が温かくなっていく。
温かくて、締め付けられるような感覚に、汰絽は地面に視線を落とした。
頬が熱くなっていくのがわかる。

ぱあんとピストルがなって、汰絽は顔を上げた。
綱引きが始まっている。
最初は好野も、杏と風太も出ていない。
けれど、白熱した戦いに汰絽は、立ち上がった。


「頑張れー!! 負けるんじゃねえー!!」

隣から大きな声が聞こえてきて、汰絽は隣を見る。
大柄な生徒が大きな声で一生懸命、応援をしていてかっこいいな、と思った。
きっと3年生なのだろう。
今年最後の体育祭だ。
優勝したのだろう。

終わりのピストルがなり、しんとする。
大きな声で応援をしていた先輩の軍が勝ったのか、嬉しそうに雄たけびをあげた。
よかったね、と微笑んでいると、次の軍の試合になる。
次は、汰絽のクラス…好野達と、風太と杏達の軍の出番だ。
好野は真ん中あたりにいて、風太と杏は後ろの方で綱を引っ張っている。
今のところは好野達が綱を引いていた。
汰絽は後ろの方で腰を低く落として綱を引いている風太と杏を見て思わず大きな声で叫んだ。


「風太さん、頑張って!!」

あたりの応援に紛れ込んでしまったけれど、届いてればいいな、と思いながら、汰絽はぎゅっと手を握る。
頑張れ、ともう一度小さく呟くと、風太がこちらを向いた。
小さく笑う風太が見えて、聞こえたのか、と少し驚いた。

好野の方へ視線を移すと、好野も顔を赤くしながら頑張っている。
足が滑ってしりもちをつきながらも一生懸命綱を引いていた。


「よし君頑張って!! こころちゃんパワー!!」

と、大きな声で叫ぶと、好野はさっと立ち上がり、また低い体勢になる。
好野のこころちゃんへの愛に、汰絽は声を出して笑ってしまった。
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