不良さんはイケメンしかいないのか
「汰絽」

「よし君…、僕ね。風太さんが喧嘩するの…、やだ」

「ああ。俺も杏先輩が喧嘩するの嫌だ。わかるよ、お前の気持ち」

「うん。…でも風太さんの、生活の一部だから、何も言えない。言えないのもつらい」

首を振った汰絽に好野はそうだな、と答えた。
それから汰絽の手の中のごみを捨てて大丈夫、と伝える。
大丈夫っていうのは、好野も安心したいからだ。
万が一のことを考えたくないから。
ふたりはしんと黙り込んで、ごみ箱を眺める。


「もどろっか」

「うん」

好野に背中を押され、汰絽は足を動かした。


「どこ行く?」

風太に聞かれ、汰絽は困ったように首を傾げる。
街中に遊びに来たのは始めてで、何をするのが正解なのかわからない。
好野の方を向くと、好野は杏と話し込んでいた。


「特に買うものもないし、黒猫行くか」

「あ、夏翔さんにお礼言わなきゃ」

「お礼?」

「夏休み入る前、スイカくれたじゃないですか」

「ああ、それか」

好野と杏も黒猫に行くようで、4人は駅へ向かった。


黒猫につくと、美南が中から出てきた。
入口に立っていた風太達を見て挨拶して、汰絽に手を振る。
汰絽の隣に立っている好野を見て、首を傾げた。


「誰っすか」

「汰絽ちゃんのお友達で、俺のお友達」

「へえー。よろしくっす。美南って呼んでください」

「あ、はい。俺は、えっと好野です」

挨拶を交わしてから、4人は黒猫に入る。
夏翔が汰絽を見るなり、駆け寄ってきてハグをした。


「わ、」

「久しぶりだなー! 汰絽ちゃん!」

「お久しぶりです、井川さん。この間はスイカありがとうございました」

「いいえ! 相変わらず可愛いなー」

ぐりぐりと頭に顎を乗せられて、汰絽はいた、と声を出す。
風太がそんな汰絽を見て、夏翔の腕の中から救出した。


「触んな」

「はいはい。汰絽ちゃん、アイス食うか?」

「あ、いただきます」

ソファーの方へ向かう途中、夏翔は思い出したように杏の隣に立つ好野に顔を向けた。
それから誰だ? と杏に問いかける。


「汰絽ちゃんの友達! もー察してよね」

夏翔に問われぶーぶーと文句を言う杏に好野は苦笑しながら夏翔に挨拶をする。
それから、4人掛けの席に座り、夏翔の出したアイスを食べた。
杏と風太が離している横で、好野は目をぱちくりとさせながら汰絽に問いかける。


「お前、いつのまに…」

「夏休み前の3連休の時。風太さんに連れてきてもらったの」

「へぇ…あの出ていった人と言い、店員さんといい、みんなイケメンだな」

「そうだね」

「不良さんってイケメンしかいないのかな」

好野の言葉に汰絽が笑い、どうした、と風太が問いかけてきた。
いいえ、と返事をすると、風太はに首を傾げ、杏との会話に戻る。


「ここね、風太さんのとこのチームのたまり場? みたいなとこ」

「へえー。じゃあ、不良さんがいっぱいいるのか」

「よし君、最近不良さんでびくびくしなくなったね。ミジンコ精神治ったの」

「いや、杏先輩とちょくちょく遊んでたら、案外絡まれてね…杏先輩が」

「それは慣れますね。…ん、風太さんと一緒にいて絡まれたことないけど」

汰絽がそういうと、好野がへえ、と感心したような声を出した。
確かに、思い出す限り、風太と一緒に出掛けて、変な人に絡まれたことがない。
どうしてだろう、と思いながら、隣に座る風太をちらりと見た。
白髪がきらきらと窓から入ってくる日差しに輝いている。
肌案外白いな、と思っていたら、手が伸びて風太の頬に触れていた。


「ん? どうした?」

「…わ、いえ…、なんでもないです」

「そうか? お前の手、熱いな。ここ暑い?」

「いえ、大丈夫です」

少しだけ恥ずかしくなって、風太の頬から手を離す。
それから夏翔が持ってきてくれたレモンスカッシュを手に取った。
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