行ってきます
支度といっても、薄手のパーカーを羽織り、カバンの中のにある程度の持ち物を入れるだけ。
汰絽はすぐにお気に入りのカバンを担ぎ、リビングへ向かった。
まだ部屋着だった風太は着替えてくるのは遅くなるだろう。
自分の手荷物をソファーに座りながら、確認し始めた。


「えっと、海行くんだよね…。タオル、ティッシュ、あと財布。これで大丈夫かな」

いつもの癖で声に出しながら確認してしまい、ひとり赤面してしまう。
それから、まだ風太が来ていないことを確認して、咳払いした。


「たろ、準備できたか?」

「大丈夫です」

風太に声をかけられ、汰絽はさっと立ち上がる。
嬉しそうににこにこしている汰絽の頭をぽんぽんと撫でた。


「駅までバイクだけど大丈夫か?」

「バイク?」

「杏から借りた」

少し感じた違和感に首を傾げながら、こくりと頷く。
よし、行くか、と風太の声を聞いて玄関へ向かった。


「忘れ物ないよな?」

「はい。ちゃんと確認したから大丈夫です」

エレベーターに乗る前に確認をする。
下のボタンを押すと、エレベーターはすぐにやってきた。
中に入ると、上の階の住人がいて、風太が挨拶を交わす。
汰絽も軽く会釈をして、風太のほうへ身を寄せた。
恋人のように距離の近い、ふたりを見て頬が軽く熱くなる。
乗ってきたふたりも一階まで降りるようだ。


「風太さん、むくとお話していたようでしたけど、どうしたんですか?」

「ああ、ほら、出かけたら家に電話かけても出れないだろ? だから、俺の番号教えておいた」

「ありがとうございます」

会話の途中で一階につき、先にふたり組が降りる。
風太と汰絽もエレベーターから降りた。
夏の日差しがアスファルトを照り付けている。


「灰色の髪の人、初めて見ました。ふたりとも綺麗な方でしたね」

「ああ。俺もあの人達みるといつも思うよ。背の高いほうの人、ここのオーナー」

「え? そうだったんですか?」

「おう。ほれ、これかぶって」

「はい」

駐車場に向かい、停めてあるバイクに風太はカギをさす。
汰絽にヘルメットを渡し、被ったのを確認した。
バイクの後ろに汰絽を乗せた。


「よし、しっかりつかまってな」

「はい」

汰絽の腕が腰に回されるのを確認して、風太はバイクを動かした。
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