The end.
放課後の掃除。
汰絽は屋上へ続く階段を任されていた。
好野から聞いた限り、この階段からでれる屋上は不良の溜り場になっているらしい。
心配だとついてきた好野に、大丈夫だよーとゆるく箒とチリトリを構えて見せる。
がたがたと震えている好野に、汰絽は小さく笑った。


「よし君、足がくがく」

「武者震いしてるんだよ」

「武者なの? よし君」

「なんか汰絽冷たい」

「そんなことないよ、いつも通りだよ」

掃除を始めた汰絽に好野は手伝うわけもなく、壁に寄りかかって汰絽を眺めた。
足は震え、顔面は蒼白になっている好野に、汰絽は小さく笑う。
それから、掃除をする手を速めた。


「うっはぁー…。つーかーれーたぁー!!」

「…」

「放課後なのに、なんで屋上に行くんだか。はるのんちょーいみふー!!」

突然聞こえてきた声。
だらしない語尾に、好野の顔がますます青ざめ始めた。
鼻歌交じりに掃除を続ける汰絽は聞こえてないのか、階段を掃く。
だいぶ集まってきたごみに、微笑み汰絽はちりとりを構えた。
た、たろちゃああああん、と掠れた声が聞こえて、ちらりとそちらへ視線を向ける。
真っ青になった顔に、汰絽は目を見開いた。


「階段なっがっ! 長すぎるよぉ。なんでこんなに長いんだよぉ」

「うるせぇ」

好野がわたわたしているうちに、声は近づいてくる。
もう好野に逃げ場はなく、壁に張り付いて存在を消去しようと息を殺した。


「うわ、なんか壁に張り付いてる」

息を殺し、俺は壁、俺は壁、と自己暗示をかけたかいもなく、好野はあっさり見つかった。
それから静まった階段で、好野は息を一瞬止めた。


「…すみませんすみませんすみません!! 俺何もしてませんごめんなさああああああい」

スライディングのごとく床に這いつくばった好野は、殺される前に土下座でもして軽い刑にしてもらおうと、必死に頭を下げた。
急な好野の行動にせっかく集め終わったチリトリを落としてしまう。
はらはらと落ちていく埃は、舞い上がって登ってきた人たちのほうにまで届いた。


「…the end…」

「えっ…! よし君終わっちゃうの? 続編は? 続編はぁ…?」

土下座をしている好野に駆け寄り、抱える。
それからぶんぶんと前後に振って問いかけた。
乗りのいい汰絽は、乗らずには居られない。
そのまま、好野をぶんぶんと振っていると、ふたりを見ていた人たちが笑い声をあげた。



「超ウケるんだけど!! やば、何これ! こんなナチュラルに面白いの初めて見たよ!」

大きな笑い声にようやく汰絽は、そちらに視線を向けた。
濃いピンク色をした髪が楽しそうに揺れている。
黄色のゴムで結ばれた髪はひょこひょこしていた。
そお、と顔をあげれば、棒付きの飴を口に含んでいる人がにこりと笑った。
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