好きな彼の笑みランキング日が暮れかけて暗くなりかけている教室。
そこの丁度真ん中の席にポツンと座る私は何をしているのかと言うと、彼氏待ちだ。
彼はサッカー部に所属していて中々にモテるのだけれど、ある日私に告白してきた。
あの時は驚いて舌を噛んでしまったのは忘れたい思い出である。
そろそろ練習が終わる時間だ、と立ち上がって窓からグラウンドを覗けば、そこには愛しい彼の姿。
どうやらシュートを決めたらしく、キャプテンの円堂君と笑い合っている。
ちなみにこの顔は私の好きな彼の笑顔第三位だ。
彼が好きなんじゃないかと思えるくらいの満面の笑みだ。
輝いて見えるのは私の気のせいではないと思う。
「おーい、もうすぐそっちに行くからー!」
私に気付いた彼が、私に向かって大きく手を振りながら笑う。
これは第二位。
常に笑顔の彼が、私にだけ向けるこの笑顔は甘く蕩けるような笑みなのだ。
この笑顔を見たときは私はいつも微笑んでしまう。
グラウンドから彼の姿が消えたので、教室の戸締まりをすることにした。
窓の鍵を閉め、荷物を持って電気を消した。
どうせすぐに彼は来るだろうから電気を消しても支障はないだろう。
「なまえ!」
『ヒロト!……ユニフォームのまま来たの?』
「すぐ会いたかったからね」
薄暗い教室の中、彼にユニフォーム入れの鞄と普通の鞄を渡した。
ありがとう、と彼はそれを受け取っていつもの笑顔で笑った。
「戸締まりは?」
『ちゃんとした。あとはドアを閉めたら終わり』
「そっか」
何故かヒロトは教室を見回した。
そして、好きな笑顔第四位の顔で笑った。
悪戯を思いついたような子供のような顔。
「誰もいないしさ、キスしちゃおうか」
『それ、聞いてないよね?』
「うん。決定事項」
そして彼は私の首に手を回して、唇を重ねた。
小さなリップ音をたててそれは離れ、彼は笑った。
「ごちそうさま」
それは、先程とはまったく違った表情。
ニヤリと笑った、怖いくらい格好良い笑み。
あぁもう、その表情反則…。
2011 09/30 やく
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