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「うー、寒いー……」
英二がこたつにうずくまって呟く。
金曜日の夜。明日は珍しく部活が休みだ。英二が映画が観たいなんて急に言い出すから、二人で歩いてレンタルショップに行った。外はもちろん冷えていて、帰った瞬間英二はこたつの住人になった。
「自分が行きたいって言い出したんだろ?」
英二がこたつから出てこないので、俺がテレビを付け、レコーダーにDVDをセットする。再生ボタンを押して、リモコンを手に取り英二の元へと戻っていった。
いつもはそのままこたつへと入るのだが、なんとなく英二に振り回されているのが悔しくて、少し悪戯心で英二の後ろに腰を下ろしてみた。

「なんだよ?」
「別に?」
英二が怪訝そうな顔をしたが、無視することにした。そのまま英二を抱きかかえて、首筋に顔をうずめる。
「こっちの方があったかいかなと思って」
その途端、英二の耳がぽっと赤く染まる。
「……俺はゆたんぽかっつーの」
英二がそう言って俯瞰した。英二が照れている。珍しい。

そんな可愛い姿に欲が出て、俺は英二の服の中へと手を忍ばす。耳の裏に鼻先を擦りつける。やっぱり、どこもかしこも、英二はあたたかい。
「……映画観れないんだけど」
英二が前を向いたままぶっきら棒に呟いた。
「一週間借りられるからいいだろ」
「これ一泊しか借りれないから」
「じゃあ、明日の朝観ればいい」
すると、英二は観念したのかのろのろとこちらを振り向いた。これ幸いと、俺はその唇にキスを落とす。
リモコンって便利だ。
なんてちらりと考えながら、俺は電源ボタンへと指を伸ばした。



「深夜のこたつ」で登場人物が「抱きしめる」、「湯たんぽ」という単語を使ったお話
2011.2.3



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