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夕方の河川敷。
まるで青春ドラマの主人公みたいに、座り込んで夕陽を見ていた。
馬鹿みたいだ、と心の中で自嘲する。それで何かが変わるわけでもないのに。
「ここにいたんだね」
後ろから中学来の友人の声が聞こえた。返事をしないでいると、勝手に隣に座られる。
「いつまで来ないの?」
俺は返事をしない。
「仮入部の期間終わっちゃうよ」
そう言うと彼は俺の隣に置かれたグローブに視線を落とした。
「それ、英二には似合わないよ」
野球部の備品である古いボロボロのグローブ。
自分用のグローブを用意するまで、新入部員に貸し出されるものだった。
「英二までいなくなっちゃうと、ちょっと寂しいな」
「……ほっとけよ」
「まあ、英二がそう言うなら僕は何も言わないよ」
そう呟いて、立ち上がる。最後に、
「金曜までだからね、仮入部期間」
と念を押すように言い残し、去っていった。
分かっている。俺がテニスから逃げられるわけがなかった。
それでも、抵抗したかった。
……あいつのいないテニスなんてすんなりと受け入れたくなかった。
きっと俺はグローブを返し、テニス部へと足を運ぶだろう。また誰かとペアを組んで、ダブルスをするんだろう。
それがどうしても、嫌だったんだ。
重い腰を立ち上げ、鞄とグローブを拾う。
そして、いつかあのコンテナから見たのと同じ、夕焼け空に背を向けた。
「男子高生」と「野球」が出てくるせつないお話
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