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部室に残っていたのは俺たち二人だけだった。
俺が書き終えた部誌を閉じると、英二は未だベンチに座ったまま呆けていた。そのまま帰る支度をし、荷物を置いて英二へと近づく。
「英二、終わったよ」
英二は返事をしない。
練習の時に着ていたレギュラージャージのまま、ただひたすら黙っていた。

「ほら、着替えるぞ」
英二の服に手をかける。その瞬間、強く手を振り払われた。
「触んな」
英二が俺の顔を見つめていた。
その表情は怒りに満ち溢れていて、それでいて今にも泣きそうだった。
「どうして俺に言わなかったんだ」
「……ごめん」
「謝ってどうにかなんのかよ」
「それでも、ごめん」

英二は再びただ黙って座っていた。そして、その目からは涙が溢れていた。
俺は英二を着替えさせる。ジャージのファスナーを下げ、腕を引き出す。英二が動こうとしなかったため、それはとても困難であった。
やっとのことで脱がしたジャージをたたんでいる時、視線に気づく。

英二が俺を見ていた。
先ほどのような怒りは感じられなかったが、強い視線を俺に向けている。そして、ふと近付く唇。

ぶつかるように、何度も何度もキスをした。俺の顔が英二の涙で濡れる。
それを感じる度に哀しくて、悔しかった。

キスを終えたあと、英二が俺の肩に顔をうずめる。俺は英二を抱きしめながら、英二の泣く声を聞いていた。
「……俺、勝つから」
「うん」
「だから、ちゃんと見ててね」
「うん」



ちゃんと見ているよ。
コンテナで誓ったあの約束の代わりに、この約束は絶対に守り通すから。



キス題。シチュ:倉庫、表情:「泣き顔」、ポイント:「服を脱がしながら」、「相手にキスを迫られている姿」 倉庫→部室へ変更しました。


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