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英二先輩たちの愛の巣(笑)は、ボロいけど、2DKで、わりかし広い部屋だった。
ダイニングと、残り二部屋はそれぞれの部屋として使っているらしい。
……良かった、寝室が一緒とかじゃなくて。

いや、別に偏見はないのだ。ないのだが、二人ともよく知る人物であるから、二人のそういうコトが垣間見えてしまうのがちょっと気恥ずかしい。

「適当に座っててー」
買い込んだ酒をテーブルに置き、英二先輩は台所へと向かった。
あれ?つまみがねーじゃん。
袋をのぞくとそこには酒しか入っていなかった。英二先輩のおごりなので買い物は先輩任せだったのだ。
ま、家になんかあるのかな、と勝手にテレビを付けて待っていると、何やら美味そうな匂いが漂ってきた。英二先輩が皿を持って帰ってくる。

「お待たせー!枝豆と、いかのニンニクバター炒めだよん!」
なんと英二先輩はつまみを手作りで用意してくれたのだ。
「おお!手作りっすか!すっげー!家庭的っすねえ」
「いや枝豆は冷凍茹でただけだし。イカも切って炒めただけだし」
「十分すごいっすよ!早速乾杯しましょう。乾杯!」
「ん」
「せーの!」
「かんぱーい!」





俺たちは乾杯をし、自分の近況や、かつて仲間だった越前や手塚部長の活躍について話した。
「越前のやつもすごいですよねー!一度生で試合見てーなあ。越前、アメリカまで旅行代出してくんないですかねー?」
「んー」
「あいつ以外にケチっぽいからダメかなー?桃先輩そのくらいも出せないんですか?まだまだだねー、なんつって」
「んー」
「タカさんの所の寿司もタダっつったら妙に喜んでたし」
「んー」
「英二先輩?」
「んー」
英二先輩はテーブルに突っ伏したまま生返事を繰り返していた。

……ダメだ、つぶれた。ちょっと早くないか?それより一体どうするべきだろうか。

「先輩、こんな所で寝たら風邪ひきますよ!起きてくださいよ」
「んー」
「英二せんぱーい!」
「んー何?うるさいなー」
良かった、意識が戻ったようだ。
「眠いならもうお開きにしましょうか?」

俺の提案を先輩はちょっと考える。
「ん、そうする。ごめんね桃。俺から誘ったのに早く終わっちゃって。」
「いえいえ、おごってもらったし、美味いもん食わせてもらったんで」
「桃は俺のベッド使っていいからねー」
「え?先輩はどうするんすか?」
「俺は大石のベッドで寝るから」
「はい?」
「恋人のベッドに他の奴なんか寝かせないもんねー」


はいはい、そうですか。ごちそうさまです。
でも、別に男同士だし気にすることないのに。いや、男だからだめなのか?
「じゃあありがたく使わせてもらいます。英二先輩の部屋ってどっちっすか?右の方?」
「ねー、桃だっこ」


……今、なんか幻聴が聞こえたような気がする。おかしいな、俺も酔ってるのかな。
「桃!だっこだってば!」
「……幻聴じゃなかった」
「は?」
「いえこっちの話です。無理ですって!先輩結構大きいんですから」
「いや、背丈の割りに軽いから、俺。あの軽々としたアクロバティックプレーを知らないとは言わせねえ!」
「いやいや、それはよく知ってますけど」
「何々ー?パワープレイヤーだった桃城くんが俺を運べないとでもー?」
「いやいやいや、そんな訳ないでしょうが!そりゃあもう余裕で運べますよ!この筋肉は衰えてないっす!」
「じゃ、よろしく」
「しまった!」
引っかかった!自分で自分のバカさに呆れる。俺ってこんなにバカだったのか。ジェンダーフリーも覚えたのに!

英二先輩を見ると、またテーブルに突っ伏していた。いつもこんな感じで大石先輩にも甘えているのだろうか。……先輩も大変だな。
しかし、自分も下に弟妹がいる身分であるので、こうやって甘えられるのはなんだかカワイイと思えてしまう。きっと大石先輩もそう思っているに違いない。


「じゃあ肩は貸しますんで頑張って歩いてください」
「ええー!桃のいけずー!」
「ほらじゃあ行きますよー。せーの!」
俺は先輩の肩を担いで合図とともに立ち上がった。先輩も渋々歩きだす。
「……あっちが大石の部屋」
先輩が扉に視線を寄こす。片手で何とかノブに手を掛け、足でよっと扉を押し開ける。行儀が悪いなんて知ったことか。

部屋に入り、ベッドの前まで来ると先輩は俺の腕を振り払い、ベッドへダイブした。
「ああ!ちょっと先輩!」
掛け布団の上に寝られたら困る。
「先輩ってば!」
俺は強く先輩を揺すったが、先輩は寝入ってしまったようだ。寝るの早!
せっかくここまで運んできたのに布団が風邪なんかひかれて明日の朝シバかれたら苦労が台無しだ。俺は先輩を転がしたり布団を引っ張ったりして何とか先輩に布団を被せようと四苦八苦した。
と、その時、ガチャリ、とドアの開く様な音が聞こえた。


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