おまけ



あなたの好きな人 おまけ

「好きだ……英二、好きだよ」
大石のかすれた声が耳をかすめ、背中がぞくりとした。
そのまま唇を奪われ、口内を大石の舌が這いずり回る。もう何度目か分からない。さっきまで残っていたチョコの味は、全て大石に取り去られてしまった。
「英二、好きだ……英二は?」
「んっ」
俺も意地になってしまって、必死に口を紡いだ。
さっきから大石は絶え間なく『好き』と囁いている。
「好きだ……英二」
ほら、また一回。

思いつきで始めたいたずらだけど、もうそろそろ続けるのも限界だ。
大石の声が、指が、吐息が、絶え間なく俺に『好き』だと囁く。

「ねえ英二……言って?」
大石からの『好き』を受け取る度に、俺の中でも『好き』が貯まっていって、もう今にも溢れそうになっている。
「英二……」
ほら、また一回。
大石の目が、『好き』と囁く。
……もう駄目だと思った。


「……俺も、好き。だいすき」

その途端、大石の目がとても嬉しそうに細められた。大石の整った顔がくしゃりと笑う。
なんだか負けたような気がして悔しいけど、大石のその顔を見ていたら、俺も嬉しくなって、そんなことはどうでもよくなってしまった。
ただただ、ひとつの思いが溢れる。
「大石、好き……」


ずっと、覚えていてくれてありがとう。
昔の自分はまだ子どもで幼かった。でも、そんな拙い思い出を、大石はずっと大事にしてくれていたんだね。
あの頃の話を切り出すのは恥ずかしいから、心の中でそっとありがとうを言う。
その代わり、ありったけの『好き』を今日は大石に届けるから。


目を閉じて、大石の唇に自分のそれを近づける。
まずは、チョコ味のしなくなったキスを一つ、プレゼント。



prev next

 

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -