04


声が聞こえる。
聞こえるというよりは、頭の中に響いている、の方が正しいのかもしれない。

『…くい、…………らしい……なぜ……』

何を言っているのかは、はっきりとは聞こえない。だが、怒りや憎しみといった黒い感情が篭ったものであることは確かだ。

『憎らしい麻生の血め……!!』


「っ!!」

ガバッと飛び起きる。悪夢でも見ていたのか、全身が汗でびっしょりとしていた。
嫌な夢、という感覚は覚えているが、どういう内容だったかは思い出せない。だが、尋常じゃないほどの悪意を向けられていたような感覚はあった。
悪い夢だ。思い出さない方が身のためなのだと思う。

「ていうか、俺、何してたっけ……」

直前までの記憶を振り返る。九重神社の跡地に行こうとして、分かれ道で左に進んで、気分が悪くなって、……それから、倒れる瞬間、鳥居のようなものが見えて。
そう、俺は山道で倒れたはずだ。

「…どこだここ」

落ち着いてあたりを見回す。そこは倒れたはずの山の中ではなくて、古めかしい民家の一室のようだった。自分がどうしてこんなところにいるのか、ということ以外は特に怪しい点はない。村の人間が倒れた自分を見つけてここまで運んだのだろうか。
しばらくきょろきょろしていると、誰かが近づいてくる足音がして襖が開いた。

「あっ!起きたんだね、良かった〜!」

そう言いながら部屋に入ってきたのは、芸能人もビックリするほどの綺麗な顔をした男だった。


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