03


あれから約2ヶ月後。夏休みに入ってからすぐに噂の地へと向かった。そわそわとした気持ちは一向に落ち着く様子を見せず、居ても立っても居られなかったのだ。
祖母の家に顔を出してからにしようかとも思ったが、帰り際に寄ればいいだろうと考えてそのまま直行。俺は今、ど田舎の山道入り口にいる。

「あんさん、そこで何しとるかね」
「は、はい?」

突然声を掛けられて振り向くと、地元の人間らしい爺さんが訝しげにこちらを見ていた。

「え、ええと、この山に登ろうかと思ってまして…」
「…そこの山道入るなら気ぃつけな。その先にある木札が立っとる分かれ道の左の方には行かんほうがいい。今は何もない土地があるだけじゃが、何があるかわからんからな」
「は、はあ…わかりました。わざわざありがとうございます」

それだけ告げると、爺さんは何やらぶつぶつ言いながら去っていった。
今の話からすると、この先にある分かれ道の先が目的地で間違いないだろう。

「…行ってみるか」

何もないなら何もないですぐに帰ればいい。とにかくこの落ち着かない気持ちをなんとかしたかった。


「木札に分かれ道…あ、ここか?」

山道は思ったより歩きやすい道で、さくさく進むことができた。30分ほどでさっきの爺さんが言っていたと思われる分かれ道に到着。
立っている木札はぼろぼろで、右を向いた矢印と「山頂はこの先」という文字が書かれている。その下に不自然な空白があったのでよく見てみると、うっすらと「九重神社はこちら」という文字が書いてあるようだった。誰かが消したのか、はたまた風化で読めなくなったのか。その真相は定かではないが、これがあるということはこの先に神社があったことは事実らしい。途端に現実味が増し、期待で胸が熱くなる。

「うーんでもなんか、嫌〜な感じするな…」

右の道からは何も感じないのに、左の道からは重苦しい空気を感じる。確かにそういう空気が流れているとかいう書き込みもあったが、それは神社の跡地周辺の話であって、こんな入り口から感じるものではなかったはずだ。不安が押し寄せる。

「でも流石にここまで来たら引き返すのもなぁ」

やばいと思ったら即、引き返そう。今は進むしかない。深呼吸して、左の道へと踏み出した。


進めば進むほど空気はどんどん重苦しくなる。左に進んでから大して歩いてもいないのに、息が上がりそうだった。意識も若干朦朧としている。

「くそ、やっぱやめときゃ良かったか…?」

こんなところで倒れてしまえば遭難間違いなしだろう。引き返そうとした途端、俺の意識はぷつりと途絶える。

目の前が真っ暗になるその瞬間、少し先に赤い鳥居のようなものが見えた。


(4/9)
[back | bookmark | next]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -