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お世辞にも綺麗とは言えないが要点はキッチリ抑えられている俺のノートと引き換えに原口が寄越した情報は、俺も知らない有名な都市伝説の話だった。

田舎の山奥に存在すると言われる、九重神社。
通称、"地図から消えた神社"。
人伝に聞いたと言う原口からは、それ以上詳しい情報が得られなかった。ノートと等価交換にしては価値が等しくない気がするので後日奢らせることにする。
ひとまず奢りの件は置いておくとして、もっと詳しい内容が知りたいと思って検索すると、それはそれは興味深い内容が沢山出てきた。

件の神社は、正確なところは不明だが随分昔からある神社だったらしい。ところが今から100年ほど前に、忽然と消え去ってしまったという。原因は不明。しばらく経てば地図上からもその名前は消えてしまった。神社があったとされる場所は今では何もないただの更地だが、何やら重たい空気が流れているとかいないとか。
さらに、信憑性は低いが15年前には九重神社がある山のすぐ近くの村の子供が行方不明になっているという話をしている人もおり、ネットの住人たちはそれが本当ならきっと九重神社の神様の神隠しに遭ったんだ、などと口々に書き込みをしていた。

普段は様々な都市伝説の詳細を読んで満足して終わるが、何か引っかかるものがある。俺が好きな体験談のような話がなかったせいだろうか。
とにかく気になって仕方がなかったため、居ても立っても居られなくなった俺は、この九重神社があるとされる場所に行ってみることにした。調べてわかったことだが、神社がある場所は俺の母方の祖母の家からそう遠くない場所にあるようだった。
そうなると少し遠出になる上、期末のテストやレポートも控えている。バイトも休みを取らなければならないし、今すぐ向かうというわけにはいかない。時間がしっかり取れる夏休みに向かうことにしよう、と心に決めてパソコンを閉じた。

特別楽しみというわけでもないのに、妙に心が落ち着かなくてそわそわしてしまう。きっと、普段では考えられない自分の行動力に驚いているだけだろうと考えて頭をふるふると振った。
それでも頭の片隅からは、ふと感じたものが消えることはなかった。

何故かはわからない。でも、呼ばれている。
そんな気がした。


(3/9)
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