07
そのままなんやかんやでトンデモ美形と連れ立って歩き、そいつとは鳥居の前で別れた。最後まで寂しそうなオーラを出していたがきっと気にしたら負けだ。
鳥居を抜けて山道を歩く。空気は相変わらず重苦しくて息がしづらい。倒れるほどではないのが幸いか。ざくざくと来た道らしき道を歩いて数分。
それの前に立ち止まって呆然とした。同時に絶望感が俺を襲う。
目の前に広がる、鬱蒼と茂った森。山道はそれを前にして途切れていた。他に道らしいものすら見当たらない。
認めたくはないが、神隠しに遭ったのだ。よく考えなくてもわかる。そう簡単に帰れるわけがない。
「じゃあどうしろって言うんだよ……」
このままずっとここにいろというのか。そんなのは嫌だ。何があろうと絶対に帰る。そう思う気持ちは強いのに、どうしたらいいのかわからなくて苛立った。
「…戻ろう」
このままここにいてもきっと何も変わらない。何の手がかりもない今、頼れるのはあの怪しい美形しかいない。
ずっと気のせいだと思っていたが、そもそも俺が神社に向かおうと思ったのだって、何かに呼ばれているような気がしたからだ。帰るにはおそらく何かしらの条件があるのだろう。
そうなればまず必要なのは情報だ。今わかっているのはこの近辺が九重神社の区画だということくらいしかない。
きっとあの神社に何かある。それをどうにかすれば帰れるはずだ。それに縋るしかなかった。
「あれっ?帰ったんじゃ…」
戻ってきた俺に対して、当たり前だが例の男は驚いていた。無理もない。
「道が途切れてて、帰り道がわからなくなってて。そのままそこにいてもどうすることもできませんし、戻ってきちゃいました」
「…そう、なんだ。えっと、それで君はこれからどうするの…?」
「あー、どうするかとかは何も決めてないっすね。まずは情報整理しようと思いまして」
「じゃあよかったら寝泊まりはうちでしていってよ。流石に今の君をほっとくわけにはいかないし」
「いいんですか?助かります」
「いいよ、気にしないで。不謹慎かもしれないけど、歓迎するよ」
「ようこそ、九重神社へ」
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