てにす | ナノ
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近くのコンビニで買ったアイスを加えながら長い廊下を徘徊していると、ふと目に入ったノート。デスノートだったらどうしようなど夢をみつつ目に入ったその青いノートを拾い上げる。と、その表紙には目に痛い真っ赤なハートがでかでかと一つ存在していた。デスノートじゃあなさそうだ。そのハートの中には白で相合傘が書かれている。さらに傘の下には骸さんと、骸さんが気に入ったといって脱獄の時に連れてきた女の名前が仲良く並んでいた。

「何だコレ…?骸さんの?」

何気なくパラパラとページをめくる。中は可愛らしく纏められていた。女の方のノートだろうか。


『嗚呼…可愛い僕のエンジェル名前。愛しのマイスウィート。ちょっと肩に手を置いただけで死ねパイナポー燃やすぞ、とエルボーを容赦なく喰らわせる程のシャイなところがまた愛らしいキュートなエンジェル。クフフ…まったく愛情の裏返しが激しい天使です。その後に続いたハイキックを繰り出した時にチラリというかバッチリというか見えた水玉パンティー…今日も僕の息子は元気にビンビンです。
明日はイチゴパンティーな予感がします。クフフフ。長く伸びた白い脚、そのスカートの中にはイチゴがアハーンというわけですね。大いに萌える事間違い無しだ。ハァハァ』




オレは、その続きを読む勇気がなくて静かにノートを閉じた。


「骸しゃん…アイツのこと…」


その時オレは、動揺していたせいもあって気付かなかったのだ…


「おや、犬。帰ってたんですか」


背後に迫る変態という名のパイナップルに。オレはとっさにノートを後ろ手で隠した。手に掻いた汗でノートが滑りそう。落ちたら最後だびょん!


「む、骸さん!いいいいい今帰ってきたんれす!ジャストナウ!」
「何でそんな驚いてるの」
「うるせーよ黙ってろバーコード!その帽子の下バーコードはげだろ!」
「うるさい…違うよ。」

「犬。何か後ろに隠しませんでした?」
「いいえーいいえー!かくしてませーん!今日の名前の下着はオレンジチェックです!」
「オレンジのチェックですか…。犬、いつこの紳士の僕がそんな破廉恥なことを訊きました?」
「(あの日記のどこが紳士ィィィ?!)」
「鼻血出しながら何言ってるんですか」
「うるさいですよ。バーコードが。所詮5円が何を言う」
「…5、円…?!」
「気を落とすことないびょん眼鏡!たとえ5円でも買える物はあるびょん!プライスレス!」


オレは、慰めるように背中を叩く振りして、ノートをそっと柿ピーの背中(ズボンの間)に忍ばせた。


「もういい。めんどい」
「オレちょっとゲームしてきます!」
「クフフ…犬、お待ちなさい。どうして名前のパンティーの柄を知っているんですか、教えなさい。ブラの柄はわかりますか」
「…………」

エロオヤジ…ぼそりと呟いた柿ピーの言葉が背中に届いた。同感だ。


***


「ん。」


学ランを脱ぐと背中に変な感触がした。何か挟まっている。どうして今まで気付かなかったんだろう。


「何、これ…」

一冊のノートが挟まっていた。激しく不愉快だ。こんな怪しげな、いかにも骸様の私物とわかるようなものが自分の手の内にあることが。


「………?」

どうしてこんな物がこんなところにあるんだ。


『11月29日(土)
今日はなんというラッキーな日でしょうか。授業中に名前と目が合いました。ニコリと微笑めば照れ屋な彼女は僕の目に向けて消しゴムを投げてきました。僕のハニーはどうしてあんなにチャーミングなんだろう…。罪です。シャーペンが額に刺さったときは名前の熱い愛を感じました。クラクラしました。きっと僕は彼女のためならば躊躇うことなくマゾヒストにだってなれるでしょう。
体育の時に見えた腹チラが本当に艶やかで、妖艶さが格段にアップしました。軽くたちかけた息子には焦りました。彼女の美しさは罪そのものだと思いました。』




「骸様……キモ」


ハートのノートの

見た者の背筋を凍らせる、それはまるで不幸のノート。





落とし主は片想い