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仁王雅治がおかしい。いや、私からすれば彼は普段からおかしいのだが。 今日は、特別。今日は一段と磨きをかけていた。彼がわからない。 「え、雅治くん今日変じゃない?」 「雅治君のどこが変だって。今日も輝いてるじゃろ」 「別の意味で輝いてるけど…ほら、ズボンがいつもより高い!」 「細かいトコまで見とるんじゃなー。イヤン」 「しかもなんかちゃんとブレザー着てるし!」 「そういう気分なんじゃ。なんか今日寒いし」 「それに、何その眼鏡!」 「ん?イメチェン」 「はあ?!何それ、つーか似合ってないよ。何でピンクの縁眼鏡なの」 「姉貴のー。可愛いじゃろー」 「キモイ!」 「今、ぐっさーっときたんじゃけど。どうしよう胸が痛い。ドキがムネムネなんじゃけどどうしようこれ」 「しかもいつもよりうざいし!アンタ誰!柳生?!」 「お前さん柳生にどんなイメージ持っとるんじゃ。泣くぜよあいつ」 制服をちゃんと着て(ボタンもちゃんと締めてる)ピンクの縁眼鏡をかけながら、背筋をしゃんと伸ばしてる雅治に焦燥感に似た感情が湧き出た。新鮮でもあったし、私の知らない雅治が存在している事に微かながら切なさと恐怖を覚えた。動きがうざい…。なんかこんな雅治、やだ。キモイ。女の子達が泣くよ。いや彼女達なら受け入れるかも。でも私は嫌なんだけど。愛で受け止めろとか言われてもなんか無理なんだけど。 目の前の彼はもしかして宇宙人なのかしら。 私があたふたしてる間にも雅治は笑みを浮かべて私を見てるだけだった。面白そうというか、なんとも言いがたいびっみょーな薄笑いだった。 「いや、お前さん、前にギャップある奴が好きとか言うとったから」 まいったというように頬をかきながら言う。私の、ため…? 「嘘だろ。」 「うん。いや嘘じゃねーけど。お前さんの反応が見たかったナリ」 「…………」 やっぱり彼はわからない。 |