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「ブンちゃん!」 部室で赤也と新作のポッキーをかけて神経衰弱に花火を散らして…じゃなかった、火花を散らしていると、突如大きな音を立ててドアが開いた。そしてドアを開けた本人は俺の姿を瞳に捉えると大声で名前を呼んだ。んなデケェ声出さなくても聞こえるっての。真田じゃあるまいし、まだまだ俺の耳も身体も衰えてねーってんだよ。不機嫌丸出しで仁王立ちしている幼馴染の女に軽く恐怖を感じながら平然を装い「何か用?」と声を返した。 「今日3時間目何処に行ってたの!サボったでしょ!」 3時間目?普通に…保健室で寝てたけど。 「私が怒られるんだからやめてよ!」 「丸井先輩またサボったんすか」 今まで空気だった奴が呆れたように俺を見た。お前はそのまま空気になってろ。世界の一部になれ。 「切原君きいてよー!ブンちゃんったらさ、今週だけで3回もサボってるんだよ!」 「うーわ。先輩も大変ですね」 「そうなの!切原君からも何か言ってやって!ブタとかデブとか凡人とか!」 何かって、それ中傷じゃねーか。何気に仲良さげだし。何コイツらってこんな仲良かったっけ? 「ブタ!デブ!ナルシスト!包茎!」 「オイ!ったく…明日からちゃんと出るって!」 「約束だからね!次サボったらタダじゃおかないから!」 覚悟してね!と口元が笑った。ツンデレかよ。笑うと可愛いな。泣いた顔も可愛いけど。 「あれ、それ期間限定のやつ?」 好奇の目を向けられたのは、まさに今俺と赤也が火花を散らせている商品のポッキー。目を輝かせてジッと見詰めてるとことか女の子って感じでドキッとした。いつもこんくらい解りやすかったらいいのに。素直じゃねーな。 「あー、い」 「よかったら食べます?」 「え!いいのー?わーい」 俺の言葉を遮ってまさに俺が、今!まさに今!言おうとしていた事を赤也のバカが言いやがった。心なしかその頬は赤い。何コイツ俺の幼馴染に惚れてんのか。ぜってぇやらねぇ。 嬉しそうにとびきりの笑顔を赤也に向けちゃってよー。あ、赤也の奴顔まっかになってやんのー!俺だって小さい頃から見てんだよ!あああ、俺に向かうはずだった笑顔が他の男に渡ってしまった。つーか後輩の分際で何勝手な事してんだよぃ 「これどーしたの?」 「俺のファンって子がくれたの」 「え、」 「妬いた?」 「ちが、ばっ…か、私が食べていいのかなーって思っただけ!」 「ふぅーん?」 「何その顔ムカつく!」 「気にすんなって!どーせ俺その気とかねーし」 「もうブンちゃん何言ってんのそんなわけないじゃん!」 「あーもー、ムキになんなって。ほらチョコほっぺについてる」 「えーどこぉー?」 「ん、」 「ありがと…」 どーだ!お前は今俺という存在によって空気も同然だろう赤也! 見たかこのラブラブっぷりを! 「先輩達って仲いいッスね」 「え、そ、んなことないよ!」 「照れんなって!ラブラブだろぃ?」 「誤解を生むような発言しないで」 「先輩、ブンちゃんとか呼んでるし」 「だってブンちゃんだし…」 「なんすかそれ」 「好きって意味」 「ぜんぜん違う。ていうか私ブンちゃんより切原君の方が好きだし。ブンちゃんといても私が目つけられるだけだもん」 「マジかよ」 「え、マジ?じゃあ先輩 俺のこと名前で呼んでくださいよ!」 「えー…!」 「何で顔赤くなってんだよ(イライラ)」 「だって、恥ずかしいし…」 「はーやーくぅー(可愛いー)」 「あ、赤…ちゃん(うわー!)」 「…え、」 「赤ちゃん!ぶはっ赤ちゃん!ナイス!」 そっか好きって子供みたいで可愛いって意味ね。そっか、赤ちゃん!天才的だろぃ赤ちゃん! 灰になる赤也をよそに、部室には暫く俺の笑い声が響いていた。 赤面トリオ 「…俺泣きそう…」 「はっ、腹いてぇ!」 「ブンちゃん笑いすぎー!」 赤ちゃんって呼んでみたかっただけなんです。 |