てにす | ナノ
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「やさしいの"優"!」
「ゆううつの"憂"!」

「ユウは病んでない!」

「いいや、病んでるさ!だからあんなに無愛想なんさ!」

「無愛想じゃないもん!優しいんだもん!」

「つーかあのユウが優しいとかありえねぇ!」

「ラビはユウに嫌われてるから優しくされないだけだもん!」

「そんな事ない!ユウは俺を好きなの!」

「何それキモ!!ってかやっぱり優しいんじゃん!」


「優しくないの!」
「優しいもん!!」


「…何やってんですか、2人とも…」

子供のように言い争う私達の傍らで、冷ややかな眼を向けながらアレンが話し掛けてきた。右手にはみたらし団子、左手にはみたらし団子が乗ったお皿が見える。アレンの左手に乗った皿の上から団子を一つ頂戴すると、ラビが丁寧にアレンに説明し出す。アレンがラビの話しに耳を傾けている間に私もさり気無く一本頂戴する。


「ユウってさ、名前カタカナじゃん。あ、カタカナってのは日本で使われてる文字の一つで…」


ラビの親切な日本文化の説明が続く中もう一本お皿から団子を頂く。


「で、あんないかにも和!って感じの男がカタカナはちょっとって話になって。まぁ平たく言うと、ユウの名前を漢字にするとしたら どんなのかって話をしてたんさ。」

その後に、漢字についてをアレンに説明し始めるラビに心の中で拍手を送りながら、3本目の団子に手を伸ばす。ああこのタレ最高ね。ジェリーさんお手製かしら。いい仕事してるわー。それにしても、ラビってバカそうに見えて頭良いんだなぁ…。ラビの説明を解ってるんだか解ってないんだか微妙な表情で相槌を打つアレンに、口が半開きだと教えてあげたい。ちょっと間抜け。


「ユウ、ウツ!って感じでしょ?」

「違う!優しいの優!」

「ぶっちゃけどっちでも良いです。ていうか日本語が解りません」

「「そうですか」」


きっぱりと言い放つアレンの背後に微かに不機嫌オーラが見える。ユウの話題に興味がなかったのか、漢字の意味と日本語に頭が痛くなったのか。結論はどっちもだろう。
外国の人に日本語を説明して理解させるのは難しい事くらい私にだって解る。ましてや平仮名、カタカナ、漢字を使う今の話題に着いて来れる訳がないんだ。私だって教団に着たばっかりの頃は英語が全く解らなかったのだから。

「アレンだってユウは病んでると思うだろー?」

「はい。」

「だから病んでないって言ってんでしょ?!」



ここはユウの良さを説明してあげなくっちゃダメみたいね。目の前の問題児2人には!


「いいですかラビさん!」

「はい!?」

「ユウは無愛想とかじゃないの!ツンデレなの!ユウのツンデレは凶器なの。私以外の人にはツンツンのツンで私にだけは、プチツンでデレなの!」

「プチツンって何ですか」

「俺らに対してツン多くねえ?」

「それにね、ユウは何より一途なの!ラビみたいに、綺麗な人を見てストライクー!なんて鼻の下伸ばしたりしないの!簡単に目をハートにするようなショボイ男じゃないんです!私以外にはハート飛ばさないんです!」

「結論的に俺はショボイと…」

「確かにショボイですよね。そこは解ります」

「哀れみの目を向けるなあああ!」

「それにね。アレンみたいな誰にでも優しく接しちゃうような八方美人じゃないのユウは。侍なの!アレンみたいに黒くないしー。ユウはオープンだしぃー!こう、2人っきりのときに見せる優しい目とかぁー、微笑とかぁー、冷たくあしらったと思ったらイキナリぎゅってしてきたり!きゃぁぁぁーもうユウ最高ううううう!!」

「八方美人…僕が…」

「あー。本当に好きな子に誤解されそうなタイプ」

「決めました。僕これからはラビに冷たくします」

「何でぇぇぇぇ!!!?」


「っでねえー、キスしてくる時とかー、優しく髪撫でてくるとことかかなりポイント抑えてるし。二人で居る時に、肩に頭乗せて来たりー、甘えてくるのがすっごく可愛いんですー!子犬みたいでー!きゃー私ご主人様ー?」

「………」

「何で神田との惚気話を聞かされなきゃいけないんですか。激しく不愉快なんですが」

「ダメさ。聞いてない…」


「ご主人様とか、傅いちゃったりされたらどうしよーう!甘い視線で囁かれちゃったりしたいわー!やーユウ素敵ぃぃぃ!ラブラブラブラブラブゥー」


「なんか話が妄想にまで発展してるんですけど」

「ダメさ。世界に入っちゃってる…」




「…ゴシュジンサマ」

「…………え」



ガシっと後ろから頭を固定される。聴き慣れた声に全身の細胞が固まる。ギギギ、と油を切らした機機械の様に恐る恐る恐る恐る、後ろですごい形相をしているであろう声の主の方をゆっくり振り返る。見なくても解るその表情が脳内一杯に広がっている。あああああ予想通り青筋立てながら口元を引く攣らせているユウが居た。さっきまで目の前に居たラビ達が青ざめている。雷が落ちてきそうだ。


「で、」

「で、とは…」

「言いたい事はそれだけか…」

「は、はひ…」



表情を変えないままコクコクと頷けば、「そうか」静かに言って、頭に置いていた手を腰に回してズルズルと引き連る。ああ、この手の温度が好きだなー。きっと誰よりも安心を私に与えてくれるこの手と、ユウがやっぱり大好きだ。アレンの優しいトコよりも、ラビの面白くて楽しいトコよりも、リナリーの明るいトコよりも、ユウが一番好き。ユウの優しさが好き。不器用さも、ちょっと無愛想なトコも。(あ、無愛想って認めちゃったよ)
腰に回された大きくて骨ばった綺麗で暖かい手を見ながら思った。好きだと思う瞬間はこんな感じだと思う。触れ合ったとき、好きを感じるんだ。…ユウ限定だけど。ラビに触られても感じないし、アレンも同じ。ゴメン皆。君達への好きとユウへのラブは違うみたいだ。引き連られる私と、すっごい恐い顔したユウに睨み付けられて 唖然とした顔して動けなくなってる2人を見ながら、放置プレイしちゃって的な申し訳なさを感じながらと手を振った。




「甘えてくる時の顔も全部好きだぜ」


なんて 普段絶対言わないような言葉を聴けるのは、もうちょっと先の部屋の中。








鳴弥さんへ相互記念!
愛に満ち溢れた話だったと思ってマス。