3人並んで人通りの少ない路地を並んで歩くのは、何気なくてそして当たり前の光景なのだけどとても心地がいい。誰かがそばにいてくれる、そんな安心感に両足を突っ込みそれを当たり前だと思う時、ふとゾクリと恐怖がつま先に訪れる。この空間にも終わりが来てしまうのか、田中軍団(久しぶりの登場だ)と私も結局は一緒だったということか。 去年の夏、わたしは何をして過ごしていただろうか。一人でいたころの日常の記憶が薄れてしまったようで、つい最近のことだというのにもう遠い過去のように扱われていた。去年の夏は、エアコンの効いた部屋に一日中こもってダラダラしたり暇つぶしに宿題したりと思い返してみると、とても輝きのない40日間だった。 今年の夏休みはもう少し輝きのあるものになるのだろうか。期待と不安を抱えながら、思い切って藤城君を遊びに誘ってみようか。王子も入れて3人でお祭りに行ったり花火やったり遊んだり、したいな。 「蓮は休み中どうすんの?」 「家でのんびりだな」 そういえば、私と藤城君は学校がある日以外は会ったことがないような気がする。気がする、というか休日に彼と会った記憶がない。というか学校の前にちょっと顔を会わせたり放課後遊びに行くばかりで、学校のない日に遊んだことが実はなかったかもしれない。 「今年は実家戻らないの?」 「ん、近いけどめんどいから今は月2くらいしか帰ってないわ」 「帰ってやりゃいーのに」 「あの人らは望んでないからいーの」 「せっかくの休みなのにねー」 「休みだからわざわざ実家戻るのダルいんだって」 私は時たま思うのだけど、藤城君の家って実はちょっとわけありなのだろうか。たまに藤城君と王子のやり取りの中に疑問を感じる時がある。 実家がどうのということはもしかして藤城君は家族と一緒に住んでいないということなのだろうか。前にもそういう話をしていた気がするけど、私が入り込んでいい話なのか分らなくて結局何も聞けずじまいだった。 「菊崎さんは休みどうするの?」 「私、は…特に何もないなあ」 「ヒマだったら俺ン家来る?」 「えっ!」 「俺もヒマしてるよー?」 「残念、呼んでない。彼女構ってやれよ」 「んー、俺今フリーだしなぁ」 「女大事に出来ない男とか最低じゃねー」 「お前も人のこと言えないからね」 「…確かに」 「そういやさ、俺って休みの日に菊崎と会ったことないじゃんね。折角だし遊ぼうよ」 「俺も俺もー折角だし遊ぼ」 「いいよお前とはいつも会ってるし。つーか休みの日くらいは見たくない」 「ひっで!菊崎さん一緒にお祭りとか行こうね」 「……………」 「振られんぼ」 ← 45 → |