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「#幼馴染」のBL小説を読む
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彼女たちと自分のことを思って正直に、真剣に向き合って話をしているというのに、なんだ『ふざけてんのかよ』って。お前の頭がふざけてんのかよ、と思わず言いそうになった。言葉こそ選んだものの口にしてしまったわけだけど。

「あの人は、みんなの王子なんです! あなただけの王子じゃないんです!」
「この学校の王子を菊崎先輩のものだけにしないで!」
「自分の王子だなんて勘違い、イタイっすよ」
「え、なんなの君らもうちょっと容赦してくれるかな」
「私たちさっきから真面目に先輩に話してるのに…知らないとか喋ったことないとか…なんなんですか!?」
「挙句には自分の偽者がいて、その人が王子がグルとかわけわかんないこと言い出すし…頭おかしいんじゃないですか?」
「お、うじ…?」

彼女たちは怒りが抑えられないというようにバンバン私に詰め寄ってくる。彼女たちの剣幕に気圧されながら、彼女たちの言葉に耳を傾けてみるとさっきから『王子』という耳に馴染んでいる単語が多く飛び交っていた。え、ええ、え、もしかして、

王子ってあの王子!?


「待って、落ち着いて聞いて」
「な、なんですか…」
「君らが言う王子ってもしかして、あの…金髪で生徒会長でバカみたいに顔が整ってるあの王子のこと、じゃ…ない、よね…?できれば違うって言ってほしいところなんだけど…」
「彼以外にいるわけないじゃないですか!」
「あの人以外に王子なんて言葉に見合う人はいません!!」

私は、頭を抱えながら大きく息を吐き出した。それと同時に今すぐ目の前に、名前を書くと死ぬという機能がついたノートを持った死神が現れて私の名前を書いてくれないかと強く思った。
私はさっきまで、なんて言葉を口走っていた? どんな言葉を大真面目に並べていた?

誰か私の記憶を消してくれ。


「あの人…キリエっていうの」
「何とぼけてるんですか!」
「ごめん、とぼけてないんです。これだけは信じて。私、あの人の名前を今の今まで知らないで生きてきました」

彼女たちは私の告白に、そろって「はあ!?」と大きな声で言った。その顔は、こいつマジありえねーよ!と私に告げていた。

「じょ、冗談、ですよね…?」
「まさかそんな、名前知らなかっただなんて」

彼女たちはありえないとでも言いたげな、珍動物でも見るかのような目で私を見た。さっきまでの勢いはどこへやら、私にジリジリと迫ってきていた彼女たちは今度は私から離れるようにジリジリと後退りした。意気消沈とは目の前で起こっているこういうことをいうのかもしれない。後で藤城先生にきいて使い方が正しいかどうか確認してもらおう。

「初対面であだ名王子にしちゃったから、名前なんて聞いたこともなかったなあ…私って非常識だね あはは」

キリエっていうんだね、となんだか面白おかしくなってきて彼女たちに向け、腹を抱えながら笑うと、非常識にもほどがあるでしょーが!とつっこまれた。いやはやまったくその通りでござんす。なんか楽しくなってきたんだけど!と彼女たちに懲りずに笑えば、この人ちょっと危ないかも…と見るからに気弱そうな女の子が先ほどまで先頭切って私を怒鳴っていた子に耳打ちする。この子たちから見える私はきっと“危ない人”の部類に入るんだろうな。

「ほ、本当に、名前も知らなかったんですか?」
「うん。さっき私めっちゃキリエなんて知らない喋ったことないって言ってたけど、知ってるし喋ってたね。あ、でも顔見知り程度かなぁ」
「そんなこと、ある…?」
「あったんだから仕方ない。私ってそういうタイプの人間だからさ」

彼女たちはさっきまで炎をごうごうと燃やしていたのに、私の重大発表のような告白が消火してしまったようで、煙のように静かになった。
そっか王子ってキリエって名前なのね。まあ名前を知ったところで王子って呼ぶのやめるつもりないし、きっとこのまま呼ばないでいたらすぐに忘れる。

「ねえ、この人さ…」
「う、うん」


「そういえば王子って何組なんだろ…?」
「…………」
「あ、そういえば君ら私が王子に手出してるとか言ってたよね」
「…えっとそれは、」
「も、もう、いいです…!」
「すみませんでした!」
「や、私がそういう、なんていうか王子たぶらかしてるようなイメージ持たれたらいやなんでちゃんと弁解させてくれるかな」
「いっいえ、もうほんとにわかりましたから!」
「先輩と桐重先輩って本当にただの顔見知りなんですね」
「仲がそんなにいいわけじゃないって、ちゃんとみんなにも説明しておきます」
「う、うん…それは有り難いんだけどね…(なんか腑に落ちないというか、なんかなぁ…)」

名前もクラスも知らない私からは何も得られない、本当にただちょっと挨拶がてら会話をする程度の仲だと、彼女たちの中で改めて私たちの関係がインプットされたのか、彼女たちは失礼しましたー!と早足でその場を去っていった。
諦めてくれたのも、私に被害がなかったのもいいことだけど、私と王子の仲がそれほどよくないのも事実といえば事実なんだけど…他人にそう改めて指摘されるというか認識されるとなんか複雑だ。

「私に被害がない、これ一番大事っすよ」



発見


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