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彼女が三人も四人もいるってもしかして同時に三人四人と付き合ってるということだろうか。そうだったらたとえ王子でも許しがたいような気がする。いや私が気にすることじゃないけど。私の意見でなく一般論での話しだ。だが彼は今日も元気に生きているようだ。無事に毎日を過ごせているということは私が考えている一般論とは常識的に考えて間違っているということだろうか。世の中間違ってないか? いやこれは仮定の話であって事実はまだ闇の中なわけだけども。
何故か夜も眠れないほど気になってしまったので、先日たまたま応じの告白シーンを目撃してしまったことを正直に打ち明け、某氏に彼女が三人四人以上いるという話を聞いてしまったんですが本当のところどうなんですか、ときいてみた。これまた何故か真相が気になりすぎて心臓がうるさくなってきた。自分がジャーナリストにでもなってしまったような錯覚に陥っているのかもしれない。

「3人4人は…確かにいましたけど…」
「なにそれそういうの彼女に悪くない」
「いやぁー…どうだろ。いいんじゃないかな? 相手の子も理解した上で告白してるんだし。俺に害はなくない?」
「……………」
「それに俺ってフェアな人間だから、誰かの希望は叶えてあげたいんだよね。生徒会長の役目だと思わない? ちょっとこじつけがましいけど」
「関心できたやり方じゃないけど、確かに…」
「女の子のお願いが叶わないなんてかわいそうでしょ」
「…………」

言いくるめられた感は否めないけど、確かに王子を悪いと一方的に決め付けることはできないかもしれない。考えてみれば王子が何かしているわけじゃない。ただ彼女たちの希望を叶えてあげてるだけだ。それに相手側が了承しているならどこが悪いという前に彼は何も悪くないように思える。

「女の子の希望は叶えるんだよね?」
「俺にできることならね」
「じゃあ、何で昨日の人のは断ったの?」
「え? ああ、うん…付き合うことになったよ」
「はぁ!?」
「もしかして菊崎さん、俺がいっぺんにたくさんの女の子と付き合うようなやつだと思ってるんですかね」
「まったくもってその通りですけどなにか問題がありますか」
「問題大有りだからね。いくら俺だってそんなことはしませーん」

つまりあれか、新しい子が告白してきたら現在いる彼女と別れ新彼女と付き合うということか。それはそれでどうなんだ。相手にとってどうなんだろう。ていうか王子はその子のことを大切にできるのか? あ、できますね。外面でなら。
大切にできたとして、王子はその女の子を好きなんだろうか?

「告白してきた子のことは好き?」
「嫌いじゃないよ、100%好きって言うのは難しいけど」

あ、これ内緒ね。と口元に人差し指を持ってきながら微笑んだ王子は思い出したように「彼女と約束があるんだった」、とポケットから携帯を取り出した。

「ちゃんとコイビトしてるでしょ」


彼女にメールでも打ってるのか、カチカチという音が私と王子の間に流れる。
王子が言うことはわかった。だけど彼の言い分は矛盾している。女の子の願いは叶える。告白してきた子の希望は叶うだろうけど、それじゃあ今まで付き合ってきた子はどうなるのだろう。長く付き合っていたいとかもっと一緒にいたいとか、そういう風には思わないのだろうか。その子たちの希望はどうなるんだろう。王子は万能じゃないし神様でもないから、全員の願いを叶えるなんてできないけど、大きな矛盾点が残る。まあコイビト関係になりたいという願いを叶えてやったんだからもういいでしょ、的なまとめ方をするんだな。

「王子って自分を好きな子のことは自分も好きになるタイプでしょ」
「んーそうかも。でもほとんどの人はそんな感じじゃないかな。聞きたいことはそれだけですか」
「あと一つある! やっぱ二つ!」
「増えたんですけど」
「藤城君は王子のこと嫌いとか死ねとか死ねとか言うけど、藤城君のことは嫌いなの?」
「何で今死ねって二回言ったの? 何で?」
「そこ重要じゃない!」
「いや重要だと思うんだけどなっ!」
「藤城君に大嫌いって言われてるけど、どうですか、藤城君のこと大嫌いですか?」
「何で大嫌いにレベル上がってるの。蓮はね、俺にとって特別だから。奴が俺を嫌いでも俺は大好きだよ」
「え、王子ってほも…!」

女の子の希望が叶わないのはかわいそうでしょ、とかフェミニスト気取っておきながら実は自分の事情を隠すためのカモフラージュだったのか!

「違うから! そういうリアクションすると思ったけどさ!」
「…はあ…王子なんて嫌いだ…」
「そんな溜息吐かないでよー」

王子は本当に王子様なのね


いや、王子が女の子とっかえひっかえしてるとかないだろ。どんだけ博愛主義だよ。つーかそれただの女たらしじゃん。王子様台無しじゃん。とりあえず王子は優しいけどひどい人だ。
私からしたらいいやつだけど。友人としてフォローしておいた。



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