彼女がそういう反応を見せたのは正直予想外だった。昨日の出来事をこと細かく報告すれば彼女は食べかけだったチョココロネを落としそのままローファーで踏みつけた。正直…びびった。 みんな藤城君の見た目に騙されてる!そう叫んでまたぺちゃんこになったコロネを踏みつけた。まあ、確かに…容姿に騙されているという部分は否定できない。だがしかし本人を前にして堂々とそれを叫ぶか普通。そんでもってコロネ踏んづけるか普通。菊崎に常識が通用しないということは以前から薄々感づいていたが、まさかこうもはっきり目にしようとは。 珍しく唖然とする俺をお構いなしに当の菊崎さんは次々と暴言を吐きながら俺の横を通り過ぎた。下心丸出しだの藤城君鼻の下伸びてたんでしょ、とか朝っぱらから道中で叫ぶことじゃないと思う。というか後半部分が俺に対しての中傷なのは何故だ。軽く傷ついた。菊崎って怒ったら絶対怖い。そんな感じがする。後が怖いから怒らせないようにしよう。まさかこんな怒るとは思ってなかった 「何かよくわかんないけどイライラする!」 「確かに俺もちょっとかちんときたけどさ」 「私のチョココロネ返してよ!」 「コロネかよ」 「人をそんな簡単に扱うのなんかやだ!」 「ごめん俺が悪かった、朝からそんな怒ると後で疲れるから機嫌直せって」 「ハーゲンダッツ食べたい」 「朝から食うのかよ」 「お昼は藤城君のおごりね」 「お前弁当持ってんじゃん」 「じゃあ放課後!」 「珍しく後悔したわー。菊崎めっちゃ怖いわー」 「絶対っ、鈴木さん藤城君のよさに気づいた!」 「は、…鈴木ってどれ」 「昨日までターゲットだった人!」 「えー…俺っていいとこあんの」 「話しかけてきたらどうしよう…藤城君が目立ったらどうしよう」 「後半よくわからん」 1分くらいどうしよううざいどうしようと騒いでいたけど、彼女の中で何かを導いたのか「平穏一番だ」と気づいたら勝手に自己完結していた。オートで盛り上がる人ってほんと羨ましいわー、自動でスイッチ切れるんだもん。とりあえず今の菊崎に必要なのは ← 31 → |