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他人と距離を置き始めたのはいつだっただろう。他人に興味を持たないようにしたのは、一体いつだったろう。ただ愛情を求めては理解されず。ただ否定されて、ただ受け入れてもらえなくて。あの頃からまったく成長していないといわれればしていないのかもしれない。でも、自分という存在はそこにあって、成長しなくてもそこに居るという事実は変わらないし、現状自分は自分でよくやれてるとすら思う。だったら成長しなくても平気なんだと思う。求めた理想、抱きたかった希望も。嘘だと否定され、信じてもらえなくて、本当のことだったのに信じてもらえなくて。最後には理解されずに一方的に悪く思われてた。理不尽だと思った。何故自分がここにいるのかを、他人でも誰でもない自分を責めた。別に自分がここに居ることが間違いだなんて思わないけど、思ってなかったけど、それでも自分を責めずにいられなかった。他人を責めてよかったんだと、誰かに言ってもらいたかった。それでも、それで他人を責めればあとで自分が惨めになるから…ひたすら自分を責めては同情して、気を紛らわせて。自分は間違いなんかじゃないと、自分の存在の正当性を探していた。
誰でもない他人でもないあの人たちに否定され、一番の存在なはずの人に否定されたんだからきっと他人にだって受け入れてもらえるはずがないと捻くれて、他人と距離をとった。あの人たちとも距離を置いた。何が間違いで、誰が間違ったのかわからない。ただ一つ強く思うのは、自分は

正しいという事実


それだけを確信にして、今まで他人を嘲笑うように見下して、今までずっと………

誰かに受け入れてほしいと素直に思ったことがあったかなんてどうかわからない。ただ自分が正しいという、確信がほしかった。暖かい温度のなんていらないと強く否定して、本当はどこかに仲間を探していた。とりあえず要約すると、俺の性格はあの人たちのせいによって編成され、俺はあの人らが大嫌いだということ。いや、違うな。嫌いじゃない。大嫌いでもない。ただ、好きじゃないだけ。嫌いでも好きでもない“無”の存在に近い。過ぎたことは気にしないような性格なので、今更憎いとか憎悪とかは沸いてこないけど…ただいなくてもいても大して変わらない色あせた存在として俺の中にあるということ。今更どう足掻いたって、過去には戻れないし、戻れたとしてもどう自分が行動してどう解釈すれば自分の思い通りになるのかなんてわからない。結果、俺はあの人たちのことが嫌いだ。“無”に近いけど、100%でいうなら62%くらいは嫌いに入る。嫌ったって、これからどうなるのか解らないし、きっと変わりもしないだろうから嫌いなら嫌いでもいいか。意思が強いってほどでもない、自分の性格を好きか嫌いかと聞かれたら、きっと俺は…気分による、場合による、と答えるだろう。

ひねくれてて、他人なんて気にしなくて、自分以外どうでもよかった、そう思ってたとき、俺と同じような目をしている奴を見つけた。見つけた、というより、気付いた。
いつからか解らないが、隣にそいつはいて。ふと隣を見れば、居た。それが菊崎だった。名前は知らない。ただ知ってるのは、女っつー事と俺と同じような何かを感じたってことだけ。

そして、気付いたら隣に居た。横だった距離がいつの間にか隣になっていた。気付けば、一緒にいた。誰か、他人を気にするようになった。他人って言っても彼女限定でだけど。まだまだ出会って間もないけど、それでも少しでも受け入れてもらえたのが嬉しくて。自分と同じものを持っている彼女に、初めて他人へ興味が出てきた。興味なんて言葉で表しきれるか解らない感情は、焦燥と共に安心を与えてくれた。
出来れば、二人の出会いは偶然であってほしい。運命とか必然とかそんなちっぽけな言葉で片付けられないくらい、それは突然訪れて…たまたま出会えたという軌跡が嬉しいと思うから。
とりあえず、俺の世界にある好きと嫌いを言うならば。“あの人たち”は嫌い、クラスの連中も、その辺の奴らも、グリンピースにピーマンも、冷凍食品のエビフライは嫌い。豚骨ラーメンとクリームパンと菊崎は好き(友人として…つーか俺らって友達って呼んでもいいのか?)。好きと嫌いだったら圧倒的に嫌いなものが多いから、出来れば好きなほうは気にかけるようにしたい。あ、今ちょっといいこと言ったかもしんねー。心の名言集に記録しておくか…んなもんねえけど。





「菊崎さんそんなとこ隠れてどうしたの? 外出れば?」
「いや、藤城君めっちゃ機嫌悪そうなんで触らぬ神になんとやらです」
「いや、あれはただ考え事してるだけじゃね? 無表情だからわかんねーけど」
「何言ってんですか、クリームパン食べてるくせに無表情だよ? 不機嫌なんだよ!」
「いつもあんなんだろ」
「ていうか王子はなんでここに? ここ屋上ですよ? 私と藤城君のランチスポットですよ」
「お前らのじゃねーだろ」
「一人で屋上とか…王子って実は…」
「何考えてんのか知りたくないけど。…ご一緒しようと思って」
「えぇー…藤城君の機嫌が更に悪くなるような」
「おお、忘れるとこだった。はいこれ、菊崎さんに」
「おおお! シュークリーム! 苺じゃ!」
「それ季節限定なんだって。女の子ってそういうの好きでしょ?」
「まあ、好きか嫌いか聞かれたら割りと好きですけどね。重要なのは苺ってとこだと思います」
「相変わらずよくわかんねーな」



「…奴は40%以上57%以下で嫌いだ」




所詮


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