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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -



今日の出来事:
蓮君に、お友達が出来ました。蓮君は僕にとって大切な友人なのですごく嬉しかったです。

「まあこんなもんでいいか。俺ってばいい子だなぁ」

シャーペンを耳にかけ、書き終わった日誌を掴んで席をたつ。生徒会長の俺でも日直はやるのだ。当然だが。もう一人の日直(女子)は「後は俺やっとくし、暗くなる前に帰りなよ」と一人で帰らせる口実を作って笑顔付きで見送ってやった。一緒に帰るってなると多分めんどうになると思ったからだ。
ちなみにここは男子便所の前だったりする。先ほど席を立つと言ってしまったが、正しくいうと便座を立つだった。うっかり。

「便所で日誌書く奴もいねえよな」

何故か笑いがこみ上げてきて、廊下で一人笑っていると教室から出てきた菊崎さん(律儀にさん付け守ってる俺って…)に目撃され、とても痛々しいものを見るような目をされた。挙句「大丈夫ですか?」 なんて心配されてしまった。彼女は可愛い顔して結構ひどい。性格の方が若干、歪んでいると思う。俺のように柔軟に生きてほしいものだ。
とりあえず、挨拶を交わしてみる。意外にもちゃんと返してくれた。まあ性格は素直じゃないけど(別の言い方をすれば素直すぎ)、常識はある子らしい。あれ、俺もなんだかんだ言って彼女並に失礼なような…。

「菊崎さんこんな時間まで何してんの?」
「あー、…補習。会長は?」
「日直」
「ああ。生徒会長でも日直とかするんだ」
「そりゃあね、俺だって生徒だから」
「日直って一人じゃないでしょ? 他の人に任せそう」
「どんなイメージ持たれてんだよ」
「女の子に笑顔で、これよろしくね、とか言って押し付けそう」
「笑顔で、ってトコまであってるけど。寧ろ逆」

彼女はさして興味なさげに ふーんと呟いて先ほどまで睨めっこしていたであろうぐしゃぐしゃのプリント数枚を持ち廊下を渡っていく。どうせ行き先は職員室で、一緒なのでご一緒させてもらうことにする。

「ねえ王子」
「……おうじ?」
「あ、」

こっちも見ずに“王子”という単語で俺を呼ぶ彼女を思わず睨んでしまった。彼女がその時どんな表情をしていたのか解らないが、なんだか裏切られたような気になってしまった。別に彼女の何かを信じていたというわけでもないのに。所詮この子だって他の女と同じなのだろうか、と考えると空しくなった。蓮と一緒にいるくらいだから普通の子とは違うのかと思ったけど、残念だ。

「あー、うん。これから会長のこと王子って呼びたい」
「は? なに、お姫様になりたいわけ?」
「勘弁してくださいよ。相手が会長じゃシンデレラにだってなれませんー」
「じゃあどういうつもりで?」
「会長の言動が面白いから、王子ってあだ名がぴったりだと思ったんです」
「(よぉ解らん)」

普通の子じゃないのは確かみたいだけど。なんとなく言ってることがひどいような…言動が面白いって。俺別におかしなこと言ってるつもりじゃないんだけど。彼女はそれが当然のように喋るから、怒る気もわいてこない。怒る前にズキーンと心臓が痛くなった。トキメキ、なんて素敵なものじゃなくてショックとかそういうネガティブな方のズキーンです。

「ダメならいいや、会長ってのも呼びやすいし」
「や、名前聞こうよ?」
「その辺はちょっと…」
「なにがちょっと?」

よくわかんねー女


彼女のことについて考えている内に、職員室の前まで来ていた。この前興味出てきたって言ったのに興味なんて微塵も持ってないような態度になんかこっちが振り回されてるような気がしてきた。当初の予定では、俺の方が蓮と2人まとめて振り回してやるつもりだったのに。失敗に終わりそうだ。

「おっせ」
「薄情者の藤城君だ」
「だから予定があったんだって」
「待ってるなら助けに来てくださいよ。数学得意なんでしょ」
「つーか、なんで王子までいんの」
「ナンパされました!」
「してねえから! つうか王子?!」
「王子だろ。もう存在が痛々しいからさ」
「意味わかんねえ」
「ちなみにこれ言ったの菊崎だから」
「は!?」
「ちくらないでください! せっかく誤魔化したのに」
「菊崎さん、嘘吐きは泥棒の始まりなんですよ?」
「藤城君が無駄に作り笑顔だ…」
「無駄にかっこいいだろ」
「豚骨ラーメン食べてる時のがかっこいいよ」
「んだ それ」

「ちょ、君らちょっと、俺にもわかるように説明してくれる? その前にまず蓮は俺に挨拶しろ」
「だからー、君のー言動がーうざったいからー、あだ名もうざいのでー、いいかなってー」
「お前がうぜーよ」
「相変わらず一定のトーンで喋るからテンション高いのか低いのか解んないですよ」
「低音火傷みたいな感じだって」
「藤城君その例え微妙」
「(こいつら俺に対して酷すぎる…!)」

心の中で打ちひしがれる俺なんてお構いなしに菊崎さんは職員室の中へ行ってしまった。

「王子ー、」
「やめろお前まで」
「菊崎が王子って呼ぶらしいから、なんか移った。やべえ中毒」
「最悪」
「あのさ、俺らこれから飯行くんだけどお前も来る?」
「………え?」
「俺今所持金少なくて」
「俺の感動を返そうか」
「なにが?」
「デレが来たかと思ったじゃねーかよ」
「は、男たらす趣味なんてねーよ」
「俺だってねーよ」
「行くの来ねーのどっち。寧ろ金ある?」
「後半本音だよな」
「まあ、金ないわけねーよな。お前お坊ちゃんだもんな」
「(…お坊ちゃん…)」
「いいなーお金持ちはー」
「はっ、羨ましいだろー」
「あははははー」
「今度札束で殴ったろーか」
「光栄だね」

「何で無表情で首絞めあってんの?」


「………」
「怖いんですけど」
「………」
「新しい遊びですか?」
「………」
「………」
「な、何か言おうよ…、…?」



哭声


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