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私が彼の存在を認識したのか、許したのか…とにかくどちらでもいいんだけど、普段は他人の噂なんかはまったく気にも留めないし、耳にもしない(意識してないから)私が。驚くことに、自然と、彼の情報を耳にしていた。意識していたというのか。それというもの、クラスの女子が金髪生徒会長のことを話題に盛り上がっているのだ。
生徒会長と知り合いになってしまったこともあってか何故か勝手に意識するようになって、彼女たちが話していることが自然と頭に入ってきてしまうようになっていた。彼女達が会長のことを話している時は、本当に楽しそうで(自分と会長のことしか頭にないからなんだろうけど)ニュー鈴木さん(新しいターゲットの子)への被害がないことが、少なからず私の後ろめたさとか微かに残る罪悪感をかき消してくれた。そこまで気にしているわけじゃないけど、やっぱり人として悪いことしたなあとは思うのです。少しだけど。そう言うと藤城君は鼻で笑った。どういう意味だ。
今まで気付かなかったのだが、会長って実は女の子に人気なようで王子呼ばわりされていた。あー、確かに異国の王子な外見はしてるよね。

「会長って実は人気だったんだね」
「だから言ったじゃん、女たらしなんだって」
「なんで今まで気付かなかったんだろ」
「菊崎が自己中だからじゃない?」
「否定はしないけど…」

あまり言われたくはない。
とりあえず会長は男女問わず有名らしい。金髪で生徒会長っていうのも注目される理由の一つなんだろうなぁ。生徒だけじゃなくてこりゃ教員側からも注目されてるんだろうなあ。とりあえず会長は目立つ。顔がいいから女にもてる。頭が明るいから教員には目を付けられる。でも生徒会長……性格はよく知らない。クラスの女子の話題に耳を傾ければ王子がかっこいいだのなんだのと黄色い声が飛びかうのが聞こえる。どんだけ噂されてんだ。
藤城君の時といい、私は本当に他人に興味がないんだなあ。あんなに目立ってる人のことも知らなかっただなんて(藤城君は故意に目立たないようにしてたからまだわかるけど…)

「でもさ、菊崎」
「ん?」
「実際アレと喋ってみてどう思った?」
「どう、って…どういう意味で?」
「本人は気付いてるのか知らんけど、影で王子って呼ばれてんだよ」
「あー、王子…確かに納得できるけど…」
「でもそれって、外見でってことじゃん? 実際喋ってみてどう思った?」
「…王子ってキャラでもないような…いや、私あんまあの人のこと知らないんだけど」
「外見いいやつはほんと、いいよねー」
「皮肉?(あなたも充分外見はいいんですよ藤城君!)」
「まぁねー。同情するよ、奴には」

色々とね、そう声だけ楽しそうに呟いて彼は席を立った。どうやら次の授業をサボる気らしい。私は真面目な生徒なので今回は教室に残ることにした。ただ成績が危ないってだけだけど。数学はね、数学は…数学のくせに数字より単語とかのが多いからややこしいよね。国語と英語で70%構成されてて、残りの30%が数字なわけだよ、数学って。数学なら数字をもっと活用すべきだと思う。国語は割りと得意な私だけど、数学の文章問題とかはもうお手上げだね。あれ、藤城君サボるんだよね? もし今日当てられたら助けてくれる人いないじゃん。マジか…。
藤城君はサボってる割に頭がいいのは何故だ、要領がいいからか……不公平だ。私のほうがきっと頑張ってる。そうだ、私は頑張ってるんだ。頑張ってるんだから今日は当てられませんよーに! どういう理屈なんだか。

「…王子 ねぇ…」


会長のことを思いだし(未だに女子たちが喋ってるせい)、ぼんやり頭の中に思い浮かべてみる。
確かに、王子はぴったりかもしれない。




****


「私はあの後 考えたね」

屋上で最近日課となった屋上でランチを楽しんで入るときだった(たまにプールで、だけど)。藤城君のお弁当がクリームパンだったのできっと今の藤城君は上機嫌に違いない。しかもカスタードだからね、嬉しさ倍増だろうね。

「何をー?」

野菜ジュースを啜りながら、空を見る藤城君の横顔は私を捉えることはなかった。

「会長のあだ名についてです」
「またアイツの話か」
「確かに王子なのかもしれない」
「はい?」

ストローから口を離して、ようやくこっちを向いた藤城君の顔はさっきまでの天使の微笑み(クリームパンパワーです)などどこにもなく、上機嫌から一気に不機嫌なものへと変わっていた。顔芸とはこのことか。いや違うな。

「少しだけど、彼と話した内容と、彼の言動を思い返してみた」
「なんか菊崎さあ、探偵っぽいね」
「昨日のコナンはかっこよかったです」
「観てるんだ…」
「でね。彼の言動は…痛いと思うわけです」

藤城君が珍しく口元を隠して、肩を一瞬揺らした。面白かったらしい。藤城君の笑いのツボはよく分からない。

「ん、うん。で、それが?」
「言動が痛いんだから、あだ名も痛いものがちょうどいいと思ったよ」
「それで王子ですか」
「うん! なんか日常で王子とか呼ばれてる人見ると笑いたくなる」
「菊崎、アイツのこと実は嫌い?」
「会長はライバルです」
「なんのだよ」
「その辺はまだ思考中」
「ふはっ。決まってないのにライバルなんだ」
「うん。打倒会長はもう決定事項なの」
「意味わかんないけど面白いからいいと思うよ」

藤城君が楽しそうに口元を歪ませるから、会長にちょっとだけ悔しさを覚えたけどそれ以上に嬉しくなった。藤城君に笑いを生んじゃったよ、私! すっごい!

「面白い見解でした」


座布団の代わりにこれやる、と差し出されたのは近所の商店街の福引券だった。な、なんで福引券?



強引


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