コンビニに入ると店員と私たち以外誰もいなくて、それをいいことにおでんの具を全種類買い占めるというアホなことをしつつ、私が一方的にとりつけたおにぎり2個と藤城君のお昼のクリームパン2個を買って向かいの公園のベンチに腰を下ろす。がさがさと肘から袋を提げながら両手にはおでん…宴会でもおっぱじめそうな感じです。いや二人で宴会ってのも寂しいけど。お腹はいっぱいになるけど、藤城君の財布は痩せそうだ。割り勘にしようと提案した私に対して、「黙れ」の一点張りには正直困った。いやあ男前っす。 「おでん全種類なんて頼んだの初めて!」 「俺はコンビニのおでん買ったのが初めて」 ぱきん、綺麗に割れた箸を見ながら微笑む藤城君はやっぱり綺麗だった。ううん、思慮深いんだか単純なんだか…なんだかこっちまで微笑ましくなってくる。 「がんももらっていー?」 「いーけどはんぺんは俺ンな」 「うぃー」 時期外れだけど、二人で食べたおでんは冬に食べるおでん並に美味しかった。でもおでんは寒い日に食べたいよね。 おでんを食べ終えて、ちょうど2時間目の休み時間に教室に入るとそこにはいつもどおりの教室にクラスメイトがいてちょっと面食らった。違うといえば、いつもよりも少しだけ静かなこと。私達のことなんてまるで見えてないように振舞うクラスメイトのその行動自体が私達を意識しているようで思わず笑いがこみ上げてきてしまった。なんていうか、解りやすい連中? みたいな。そんなことを心のすみで考えていたら、藤城君が隣で同じことを呟いたのが聞こえた。シンクロ。 「なんっかさー、意識しないようにすると逆に意識しちゃうよなー」 「人間の性なんじゃないでしょうかね」 「ちらっちら見てくるからこっちが気になっちまうぜ」 「藤城君実は今不機嫌ですね」 「おうよ。気にしないようにしてるっぽいけどあいつらぜってー陰口とか言ってんだぜ」 「藤城君も睨まないでくださいよ」 「まあその辺はお互い様だよね。だから余計にいらっとね…」 「わかったから、わかったからさあ、私のおにぎり潰そうとするのやめてね!」 「あー、今ならテニスボール素手で破裂できそう…実験する?」 「しません」 「あ、チャイム鳴ったー、超だりー」 ずるずると足を引きずるように自分の席に向かう藤城君に小さく溜息をついてから、私も自分の席に向かう。心配だった机の中はいじられてないようで、昨日入れっぱなしにした教科書たちがそのまま入っていた。 「あ、菊崎菊崎、見てこれ」 「ん?」 クラスに何か動きでもあったのかと藤城君の方に首を向ける。 「クラシック買っちったー、36時間充電いらず!」 「……あ、そう」 嬉しそうな表情は可愛いんだけどさ、iPodがどうのとかぶっちゃけどうでもいいよ。別に私が持ってないから羨ましいとかじゃ決してないけど、決してないけど…私もクラシックほしいです。 「つれねぇ」 「藤城君が不機嫌になることが少なくなると思うと嬉しいよ」 「うっわ、嫌味ー」 「ていうか、藤城君不機嫌なの上機嫌なのどっちなの。テンション高すぎてどっちだかわかんないよ」 「いや不機嫌なんだけどね?」 「いや疑問形で言われても…」 「さっきからクラスの奴がこっち指さしてくるんだよね、無視してるだけなのもつまんないからさ、気を紛らわせようと」 「(不機嫌すぎておかしなことになっちゃってるよ、藤城君…)」 「あ、ノートもうねえじゃん。菊崎、書くもんちょーだい」 「えぇー…(書くものって鉛筆の方なんじゃ…)」 「予備で2枚ね」 「ノートは書けるものだと思うんだけど」 「揚げ足とってんじゃねえ」 「すんませんでした」 ← 15 → |