ちまちま | ナノ
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呼吸をするのと同じくらい容易に好きと紡いでしまう唇。
呼吸をするのと同じくらい簡単にキス出来てしまう唇。

あなたにとって、好きとキスと呼吸はきっと同じくらいのものなのでしょう? とても不可欠で、簡単なことなのでしょう? 好きが篭っているはずの「好き」の言葉の奥に気持ちなんてこれっぽっちも篭ってなくて。それはただ二酸化炭素として吐き出されているに過ぎない。色んな人に好きと言う。演技なのかもわからせないまま好きと言っては近づいて離れて行く。呼吸するように好きと言ってキスをする。それがあなたが必要としているもの。だから、必要なものを得るためなら誰であろうと構わないのよね。私の目を見ながら他の女に囁く好きも、キスも、呼吸するのと同じくらいに簡単なのよね。私がどんなに泣こうが喚こうが それはあなたには必要なくて、私なんか実際不要で。あなたはただ与えられる好きが欲しいだけなのよ。言葉だけの好きで好きを与えて貰えるんだわ。

―― ズルイ人。自分は嘘の好きを捧げるくせに、相手には本物の好きを頂くなんて。そんなのってないわ。どんどんどんどん悲しくなって、あなたの好きもキスにも何も感じなくなってくる。それでもあなたは私を必要とはしないのね。“私”を必要としてはくれないんだわ。だってあなたが必要としているのは私の気持ちと唇だけですもの。私が何も感じなくなって、あなたに好きをあげられなくなってもあなたはどうもしない。それどころかあなたは、もういらないとポイと捨てるのよ。あっさりと、私の横を風のように通り過ぎていくの。そしてあなたは他の女の気持ちと唇のために好きとその唇で囁いて偽りの言葉で塗り固めたその口でキスをするんだわ。私じゃない他の誰かに。
でもそれだけじゃ私が満足できない。何度あなたと別れたくても私の唇が、心が、あなたの唇に溺れているのは確かですもの。優しく囁く偽りの言葉が聞きたくて堪らなくなるの。堪らなく、好きなの。あなたの唇から紡がれる好きが、キスが。

好きの言葉だけでいいなんて嘘だけれど、それ以上望んだりもしないのよ。だってあなたが欲しているのは心で、私が欲しているのは唇ですもの。私ははじめからあなたの心を欲していたわけじゃなくて、ただその唇を渇望していたに過ぎないのよ。

唇が吐き出した毒が私に感染して、私はただあなたに溺れているだけの人形になるんだわ。好きもあげられない私が、あなたの唇を望むなんて…とても一方通行ね。
だからあなたはわざと私の目を見ながら他の女にキスしたり甘い言葉を吐くのよね。そうやって私に嫉妬させるのよ。あなたは必要だから求めているのに、私は溺れたいから求めているの。




渇望

すれ違って当然だわ、目的から違うんだもの。


(なんじゃこれ。結局何が言いたいんだと私が言いたい/イメージは仁王でした)