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僕が、この女を好き？ 馨を好きなこの女のコトを？ なんだよ、それ。お前なら僕と馨を見分けられるのかよ。顔も性格もほとんどが一緒なんだから、僕のコトを選べばいいのに。目の前で困ったように目を伏せるこいつはの目には馨しか映っていない。何で僕じゃなくて馨なの？ どうして馨は僕じゃなくて、僕は光なの？ どうして馨が僕じゃないの。双子なのに。ほとんど全部を同じだけ持っていて、僕達は同じはずなのに。どうして馨が僕が持ってないものを持ってるの？どうして馨がこの女を持ってるの？ こいつは物じゃないけど。僕を選ばない。それは何故。馨を選んだ。どうして？ 同じはずだったのに、違う。同じはずなのに違いを見抜いたこの女は馨を選んだ。どうして馨が好きなの？僕だって馨と同じものを同じだけ持っているはずなのに。何が違った？お前が馨を選んだ理由って何？ そう尋ねれば…光は光でしょ、なんて答えになってない返事が戻ってきた。その言葉に無性にイラついて、無理矢理唇を自分のそれで奪ってやった。キスしたのも、そんな顔をさせたのも僕だ。ごめん、なんて言ってやらないけど、キスしても全然満たされなかった。寧ろこっちが謝ってもらいたいくらいだ。 本当は嬉しいはずなのに。僕を僕とみてくれるのが嬉しいのに。彼女は僕じゃなく馨をみてるんだ。馨は馨。そりゃそうだ。馨は馨で僕は光なんだから。…どうして、そんな言葉を口にしながら泣き出すこいつに更にイラつく。どうして？そんなのお前が僕を見ないからだろ。 ｢どうして、わかったんだよ！｣ 見分けてほしい、でも見分けて欲しくない。お前には見分けてなんて欲しくなかった。見分けさえつかなければ馨も光も一緒だったでしょ？ 更になんで馨なんだと叫べば、思い切り肩を上下させて怯えたような表情を見せた。何、そんな顔、馨には見せた事ないくせに。馨と僕の違いってお前にとって何？どこがどう違うのか教えて欲しいね。僕が馨だと偽れば絶対に彼女はその嘘を見抜くし、絶対に騙されない。今回のことだってそうだ。馨のフリして近づいても光光うるさいんだ。だからちょっとむかついたんだ。だって、仕方ないでしょ。好きだって思っちゃったんだから。 ｢馨 は…私に怒鳴ったりしないもん！｣ は、何。そんなとこで見分けてんだ。だったら偽るのなんて案外簡単かもね。 皮肉を込めてそう言えば、キッと彼女が睨んできた。怖くねーっての。 ｢なんでそんな事言うの。光は、馨じゃないんだよ｣ だから、そんなのわかってるんだ。本当は馨の方が大人で、僕が子供だってことくらいわかってる。彼女が好きになったのはそんな馨で僕じゃない。でも、わかりたくない事って世の中にはいっぱいあるじゃん。今だってそう。事実を認めたくなくて必死に彼女を繋ぎとめようとしてる。余裕も何もあったもんじゃない。余裕がないからこうしてお前を困らせてる。そこまでわかってて自分を制御できない自分を、どうしようとは思わない。こいつが好きだと気付いてしまったから、馨に渡したくないと思ってしまう。 光が馨になりたいなんて、寂しいこと言わないでよ…なんて言っちゃうこの馬鹿は解ってない。僕と馨を見分ける事は出来るのに、そういうとこ鈍感すぎ。寂しいこと言わないで？ 言わせてんのはそっちでショ。誰が寂しいのか言ってみろ。僕だろ。それからお前。僕が馨の僕なんていらないんでしょ？全部が馨でなくちゃ嫌なんでしょ？寂しいこと言ってんのはどっちだよ。全部、お前だろ。 もし、僕が馨だったらお前は僕を好きになった？いや、お前はきっと光を選んだね。 どうしたって僕は僕でしかなくて、馨は馨でしかなくて、アイツはアイツでしかないんだから。 神様のナイフ わかりきったエンドレス 支離滅裂･･･／ララドール |