ちまちま | ナノ
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六道さんの日記1の続編

たった一ページ読んだだけで、これ程までに背筋を凍らせ気分を害する話など存在するのだろうか。またそんなものが存在していいのだろうか。うわ…鳥肌立ってる、最悪…常人にはまずこのような汚物…ゴホン、こんな気持ち悪いものを産み出すことは出来ないだろう。これは俺の勝手な意見だが。骸様にはそれが可能だった。それは彼が常人じゃなく…超人、もしくはただの変態または変人という部類に属するからだろう。俺の結論。なんだってかまわないけど、この俺が未だに手にしているこの おぶ…いやポエム兼日記を何とかするほうが先かな。燃やしてやろうとも思ったけど…(世界中の生物のためにも。勿論俺にとっても、このノートの中心にいるであろう彼女のためにも)そんな事をしてあとで骸様に何か言われるのは嫌だな。めんどい。数秒どうしようかと考えた末、俺は静かに部屋を後にした。
部屋を出るとすぐ近くで鼻血を垂らした骸様と顔を青くさせながら必死になってる犬がいた。

「どうして彼女の下着の柄まで知っているんですか。しかも上の方まで!」
「アイツが!アイツが言ってたんです!昨日新しい下着買ったとか言って…」
「どうしてそのオニューの下着をあなたに教えるんですか!」
「そ、それは…オレとアイツの仲だか、ら?」
「彼女との仲ってなんですか。どういった関係でどこまでの仲なんですか。2秒以内に答えてください」

2人が言い争ってる間に(骸様が一方的に)気付かれないうちにと静かに2人の側をすり抜けた。そのまま足を進め、行き着いたのは1フロア下にあるドアの前。ノートを見詰めてみる。気持ち悪くなってきて眉を顰めた。一刻も早くこの凶器を俺の手から排除しよう。もうやだ吐きたい。この際このノートの上にでも吐いてしまおうか。口元を片手で押さえながらもう片方でドアの下の微かな隙間からノートを中に滑り込ませる。…ゴメン(部屋の主さん)

「手…洗ってこよう」

これで俺への害はなくなった。実にレベルの高いミッションだった。どこか達成感と清清しさに包まれた。

***

上機嫌でショッピングから帰ってくると、私の部屋の中にポツリと見覚えのないノートが一冊落ちていた。

「なに…コレ?…ゲッ、あの女の…!」

…と思ったら、骸ちゃんのノートみたい。まったくあんな女の何処がいいっていうのかしら。あんな貧乏くさい女の。骸ちゃんセンスなーい。ついに目まで悪くなっちゃったのかしら?買ったばかりのバッグや服が入った紙袋をベッドの側において、ベッドの上に寝転んだ。そしてパラパラと適当にページをめくる。私の部屋にあったんだからきっと私に読んで欲しいって事よね?骸ちゃんったらホントに私がいなきゃ駄目なんだから!もしかして恋愛相談ー?骸ちゃんくらいのお金があれば女なんてちょろいと思うけど…ましてやあの女なら泣きながら飛びついてくるわよ。

「どれどれ…」


『たまには、僕も男らしさをアピールしようといつもより積極的に彼女へのスキンシップを図ってみました。屋上に呼び出したまではよかった。彼女の人柄の良さからか、ちゃんと着てくれました。僕の顔を見た瞬間照れた彼女はすぐさまドアに向かってしまいました。いやいや相変わらずシャイなんですね。そんなところがまた男心をくすぐるというかいじらしいというか…クフフ。そんな彼女を後ろから抱きしめて、耳元で愛を囁いてみました。突如震えだす彼女の華奢な身体…。嗚呼、泣かせるつもりはなかったんです。でも僕とっても嬉しいですよ。貴女も僕の事をそんなに愛していただなんて。大丈夫です僕がたっぷり愛して差し上げます。見る見る内に赤くなる耳…。僕を煽ってますよ。嗚呼、計算ですか?クフフフフクフクフフフフ!
振り向いた彼女の瞳には涙が溜まっていました。そんな目で僕を見ないで下さい。優しく出来る自信がなくなります。理性という諸刃の剣がなんかもう大変なことになってしまいました。いやもうこれ僕のKO負けですね。彼女の罪な瞳には敵いません。耐えろ僕。次の瞬間彼女は物欲しそうにしながら瞳をゆっくり閉じた。そのまま背伸びしながら徐々に近づいてきた彼女の整った顔…。キキキキキキキッース!!女性からさせてしまっても良いものか…考えてもみましたが、照れ屋な彼女の一世一代の勇気を無駄に出来るはずもなく、僕は彼女に全てを委ねる事にしました。彼女の柔らかい匂いが鼻腔を掠め胸を刺激した。まだかと薄く目を開いた瞬間、彼女の手が僕の髪へと伸びてきた。そのまま彼女は屋上から飛び出して、階段を駆け下りていきました。僕の髪を掴んだまま。きっと恥ずかしくなってしまったんでしょう。嗚呼、やはりここは僕から行くべきでしたね。照れ隠しが激しかった分、愛の大きさも激しいに決まってます。生死を彷徨ってしまいました。いやきっとあれは三途の川なんかじゃない。あれはきっと愛の海だったんだ。大きすぎた彼女の愛に導かれたに違いない。僕は決めました。貴女が素直になれる日まで待ってます。』


「骸ちゃん…かわいそう…いろいろと」

そうだったんだ。だから昨日の骸ちゃん、全身打撲してたのね。痣だらけで、絆創膏も皮膚が見えないくらいにあんなに…。

「あの子もほんっと…自分に素直というか…」


ハートのノートの

長期戦 決定。ゴールは月より遠いかもしれない。
落とし主に脈はなし