ちまちま | ナノ
ラビが帰って来たと数分前にコムイさんに聞いた時は胸が躍った。ラビが、ホームに帰って来た。安堵した。レベル2のAKUMAと遭遇したと報告が入ったときたまたまその場にいた僕は全身が凍るように寒気がした。虫の知らせかもと思ったほどだ。だがラビは無事に帰って来た。仲間として純粋に嬉しかった。早く彼にあって「おかえり」と伝えたい。僕がそう言われて嬉しかったり、安心したりするようにきっと彼もこの一言が嬉しいはずだ。コムイさんも安心したように笑っていた。リナリーも、リーバーさんも。皆、嬉しそうに笑っていた。
ラビがそこら辺で寝てないか見てきなよ。とコムイさんが冗談交じりに言った。それがただの冗談だと解っていても、彼ならやりかねないと心配になって探すことにした。以前にもあったからだ。死んだようにうつ伏せになって廊下で寝ていた。エクソシストの一人の女性が(密かに思いを寄せている)キャァと高い声で悲鳴をあげていた。きっと今回も廊下の何処かで倒れているかもしれない。

「ラビさんなら、そこの角をフラフラになりながら曲がってましたけど…」
「ありがとうございます」

ラビを見かけたかと訊ねれば声を掛けたファインダーの人は後ろを振り返りながら指を差した。どうやら彼は怪しい足取りで食堂へ続く角を曲がったらしい。食堂に行ったのであれば、丁度お腹もすいてることだし一緒にご飯でも食べようと食べ物を頭の中に浮かべて、お礼を言いながら微笑んだ先に角が見えた。一緒に何を食べようか。僕の分まで取られないように気をつけなきゃ。角に近づくにつれ足取りが軽くなっていく。食欲は増すばかり。

「わぁ、っ!」

穏やかな気持ちから、一瞬にして緊張が走る。あの子の悲鳴のような声が、角の奥から届いた。何事かと焦る気持ちで急ぎ足になりながら角を曲がると、涙目で倒れている彼女の姿。その上には幸せそうに彼女の胸に挟まれ眠るラビがいた。


その辺で、ね
(イノセンス、発動!)

安堵から殺意へ変わる瞬間。