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「なら、いっぺん死んでみたらいいんじゃねーのかィ?」 一人でいたはずなのに、いつの間にか隣には沖田が居た。莫迦なことを言うな。死んだら生き返れるわけないだろう。生憎私は神でも仏でもなかった。 「そうは言っても、生きてる感じしないんでしょ?」 さらりと言ってしまう沖田を、私の何がわかるっていうんだという意味を込めて睨み上つけた。一人じゃないお前に何がわかる。沖田には仲間がいる、思ってくれる奴がいる。私にはいない。対照的な沖田になんて私の気持が理解出来る訳ない。 「お前の考えをまとめると」 沖田はにやりと笑って私を指差した。どきりとした。沖田に、私の気持ちなんてわかるわけない。考えを理解できるはずがない。その思いは変わらない、のに。揺らぐ。聞きたくない。沖田の言葉を、聞くのが怖い。 「自分が生きる理由が欲しいって事だろィ」 生きる理由。そうかもしれない。何のために私は生きて、何のために死ぬ? 何で私はこの場に立って、目を開いて耳を傾けて、声を出している? 至極簡単な事なのに、理由が見つからない。理由がない、だから、私は一人ぼっちなのか。生きる理由もない私に死ぬも生きるもなかった。一人でいて、理由が見つかるはずがない。じゃあ、沖田は、回りの人間は何を理由にいきてる? それは些細な物? それすらわからない。私にはそれっぽっちの物も持っていない。一人だから。なんで回りの人間は一人じゃない。どうして、みんな私と違うの?どうして、私は一人なの? このままずっと一人は嫌だよ。怖いよ。なんで、私には誰もいないの。生きる理由がないの? 私の課せられた運命は死すること? そんなの、嫌だ。一人のまま死ぬのは、もっと嫌。 生きたい。 …どうして生きたい? わからない。そもそもそんなに理由なんて必要なの?いらない、理由なんて、いらない。でも、私は、理由がないと、生きている感覚を取り戻せない気がする。理由が、ないと生きられない。私はきっと、独りが怖いだけだ。何かのために自分が存在するという許可のようなものがほしいんだ。生きる許可なんて実に馬鹿げているけど、私はそれだけ馬鹿だったという事だ。誰に許しを請えばいい。知らない。知らないから、怖い。生きるという事がわからないから怖い。死ぬとどうなるかわからないから怖い。沖田が笑う。見透かしたように笑う。私を嘲笑うように。怖い、怖い。生きたい、どうして? わからないけど、死ぬのは嫌。 「理由が欲しいならくれてやらァ」 沖田の指が髪に絡まる。くん、と捕らわれた髪を引かれる。沖田の顔がすぐ目の前にある。沖田の目に私が映っている。今、私の隣にいるのは沖田総悟という人間だ。沖田総悟が、私の目の前に居た。 「俺のために生きて、死ねばいい」 目の前で笑う沖田に私は言葉を失う。なにかが打ち壊されていくような胸騒ぎを感じた。誰かのために生きて、死ぬ。理由なんてそれで充分だとでも言いたげな顔で彼が笑う。彼が私の生きる理由となるなら、死ぬときはきっと独りじゃない。 |