ちまちま | ナノ
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「あ。丁度いい所に」
「げ、」

お茶を買うために五百円玉を自販機に押し込んだ所に、PSPをプレイしながら歩いてくる沖田に遭遇。ゲームの音がやけに大きく耳に響く。人目を気にすることなくゲームに夢中になってる沖田が忙しく動かしていた両手の親指を止めて顔を上げた。私に気付くと、ゲームを中断しポケットにPSPを突っ込みながら表情を変えないまま冒頭の台詞を視線ごと私に向けて吐き出して、口元に弧を描く。反対に私の口元はへの字になった。

「…何」

嫌な予感がする。沖田と居ると常に。ていうか実際に嫌な事が起きる。ていうか沖田が起こす。ていうかこの男セクハラ常習犯。
沖田に気を取られて未だに当初の目的を果たしていないことに、ボタンに手を添えたまま伸ばした腕の方が痛くなって来たと思ったとき漸く気付いた。沖田から視線を外し指先に力を込めると、自販機からピッと小さな音がしてガコンとそれほど静かでもない廊下に出てきたペットボトルが大きな音を立てながら出てくる。軽く泡立っているお茶を取り出して、購買で焼そばパンでも買ってこようかな。もー売り切れかな。なんて考えながら出てきたお釣りに手を伸ばすと既に沖田が素知らぬ顔で私の(ここ強調)お釣り300百円の内150円を自販機へリバースしていた。

「…何してんの」
「俺もお茶ぁー」

ちょっとそれ私のお金ェェェ!茶ぁ飲みてーんならテメェの金使え!と言葉にはせずに心の中で毒吐く。顔は遠慮なく歪ませていただきました。沖田に「不細工」と怪訝そうな顔で言われてしまった。誰のせいよ誰の!

「ごちそーさんでさァ」

沖田がミルクティーを持ちながらお釣りの200円を手渡した。150円も返して欲しい。ていうか沖田が持ってるミルクティーは私でもちょっと遠慮したいくらいの甘さなんだよね。沖田甘いの好きなのかな?

「っていうか、150円も返せよ!」
「うっせーなケチ。んなケチケチすんなって、150円くらい。ケチ」
「あんたが使った150円でいくつ んまい棒買えると思ってんの!しかもケチって4回も言った!」
「あー、5本? 因みに俺はコーンポタージュが好きでィ」
「別に沖田の好みなんて知らなくていいし! 私も好きだけど! とにかく、5本でどれほど私の空腹を補えるか解ってんの?!」
「んまい棒で満たされようなんて考えてるから太るんでィ」
「遠回しにデブって言いてーのか」

胸倉を掴みながら喰って掛かるも沖田は飄々とした態度のまま冷静に返してくる

「いや、結構近回りに…」
「喧嘩売ってんの!?」

目が合うとニヤリと笑われた。

「コエー顔」

フッて笑って、沖田の胸ぐらを掴んでいた手を沖田に取られる。以外と手でかいな…と吃驚しながらその手を見てた。綺麗な顔して手はごつごつしててなんだか別人のような気がして妙な感じだ。

「俺がいつ喧嘩売ったってんでィ。分かってねぇな、俺がお前に売ってんのは愛だけですァ」

ぎゅっと手に力を込めて、急に真剣な眼でそんな事言うから、したくなかったけど、したくなかったんだけど!思わずドキッとしてしまった。不覚だ。


愛を売る皇子


「わかったら焼そばパン買ってこい」
「どの辺が愛?!」