ちまちま | ナノ
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授業中、後ろの席の幸村くんがいきなり私の髪の毛を引っ張ってきました。勢いあまって後ろの机に後頭部をぶつけてしまいました。痛かったです、ものすごく。そして恥ずかしかったです。恨めしそうに幸村くんを見れば、彼は笑顔で「ちゃんと座ってないとダメだよ?」なんてあっけからんと言ってのけたんです。し、白々しい! 誰のせいだと思ってるんだ! お前のせいだろうが! なんてことするんだ! の意を込めて仕返しとばかりに幸村くんのすねを蹴ると、今度は椅子を蹴られ目的を果たして座ろうとした私はまぬけにも転んでしまいました。な、なんてこった…! 痛いです恥ずかしいです怖いです、幸村くんが。

嫌がらせを受け始めて早1ヶ月…慣れてしまったとはいえ、恐怖心は膨れ上がるばかりです。幸村怖い恐ろしい。友人に相談しようともみんな信じてくれません。幸村マジックにやられています。オーマイゴッド。彼の本性を教えてあげたい。信じてくれそうにないな。かなし!
そして席替えから1ヶ月、やっとこの地獄ともお別れです。やったね。オーマイゴッド。席替え万歳です。幸村くんの前以外だったらこの際 先生のまん前だって構いません。そんな気持ちで引いたくじは幸村くんの後ろの席でした。なんてこったぱんなこった! 気合が足りなかったというのかそんなばかな!
前以外ならいいと言いましたけど、何も後ろの席にしなくてもいいじゃないか。幸村くんの呪いか? 幸村マジックか? 呪いか、やっぱ呪いか、呪いなのか。涙をのんで新しい席につけば目の前にはにこやかに笑う幸村くんの姿がありました。みんな騙されちゃいけません。あの笑顔の下にどんな企みがあるというのか。ああ恐ろしい! 実に恐ろしい! 悪夢再びです! 神様助けてください! いや幸村くんのことじゃなくて…ていうか神様が幸村くんの親なら息子さんをどうにかしてよって感じですよね。もうほんとに、とにもかくにも怖いんです! 挫けそうなんです! 幸村くんが怖すぎて勉強も手につかないですよこれきっと! せ、先生助けて! 誰か助けてください切実に。

「またよろしくね」

何をよろしくするというのでしょうか! よろしくと言って握手を求めてきた幸村くんの指の間には画鋲がこんにちはしていました。心の中でヒィィィィィ!と悲鳴をあげてみましたが何の解決にもなりませんでした。ちょ、この手と握手しなくちゃいけないんですか。握った瞬間、ていうか手が触れた瞬間にぶっさすつもりですよあれ絶対。私の手を穴だらけにする気ですよあれ!
やる事が古過ぎます! いつの時代のイジメですか! 神の子と異名を持つ彼ですがやることショボイです! 神の子なら彼の両親は神様ということになるのでしょうか?

握手をスルーして(見なかった事にしよう)鞄の中から教科書を取り出そうとしたらなんとまあ吃驚!鞄の中には画鋲がびっしりと敷き詰められていました。敷き詰めるってレベルじゃないですよこれ。
恐ろしい、恐ろしいです! さすが神の子! ショボイけどダメージ大です!



先生、秘密があります
彼はいじめっ子です。


/zappy