S×R Gift | ナノ


花より可憐な君の笑顔


今の今まで、自分の思い通りに出来ないことなんて殆どなかった。
欲しいと思ったものはどんな手を使ってでも手に入れてきたし、気に入らないと思ったら即座に消すか、でなければ何の躊躇もなく切り捨ててきた。
七武海に入ったのも目的あってのことで、人の言いなりになるなんてことはなかったしそんなのはこっちから願い下げ。
それが、ドンキホーテ・ドフラミンゴという男だ。

それなのに、だ。
こんなにも自分の思った通りにならないのにどうにも惹かれて離れられない、手放せないなんてのは、この少女以外にはグランドラインの海くらいしかないのではないだろうか。

「フッフッフッ、まーたごんべがいねェ」

ふーやれやれ、と。
ここ最近拠点にしている豪勢な屋敷に足を踏み入れた瞬間、大げさなまでの溜息が零れる。
ここはグランドライン上でも比較的治安の良い島の、花で溢れる町にある丘の上の屋敷だ。
何故こんな場所に拠点を構えているかと聞かれれば、そんなのはたまには自分以外の希望を取り入れてみるかという気まぐれ以外の何物でもない。
確かに、軌道に乗り始めた事業にとって都合がいい場所という理由はあるにはあるが、ここを選んだ一番の理由は一人の少女の希望が原因だったのだ。

「わたしは、きれーな海がみわたせるところがいいよ!!」

それだけなら候補はいくらでもあっただろうが、彼女が望むのは無邪気で無垢なものばかりで。
それも温室プールが欲しいとか豪華なディナーを用意してくれるシェフがほしいとか高級ブティックの連なるショッピングモールが近くにあるといいとか、そんなお高くとまった、金さえあればどうにでもなるような要求ではないのがまた難題で、他には何が欲しいかと聞けば、眩しいばかりの笑顔で返ってくるのは「お花がいっぱいさいててほしいな!」とか「お星さまがなるたけちかいのがいい!」とか、そんな要求ばかりなのだ。
それでもにこにこきゃーきゃーとはしゃぐように言われてしまえば、そーかそーかとご希望に沿うべく手を回すしかなかった。

我ながら無様なもんだと思いはすれど、他人にどう評価されようと構わないと思うほどには入れ込んでしまった少女。
そんな、世にも珍しくドフラミンゴを振り回すことのできる唯一無二の存在が、何処かに姿を消していた。
いつもであれば、帰ってきた自分に両手を広げてお出迎えしてくれるというのに、だ。

「さーて、お姫様は何処に行っちまったんだ?フフフッ」

屋敷内にいるなら、ドフラミンゴの帰りを聞きつけてすっ飛んでくる筈。
それがないということは、彼女は今“冒険”という名の町の散策に出ているのだろう。
この町では彼女がドフラミンゴの寵愛を受けていることは周知の事実だったから、割と自由に遊ばせていた。
町の住人は比較的穏やかだし、それを知って手を出すような馬鹿はいないからだ。
しかし、もう既に日は沈みかけている。
あまり遅くまで出歩くなとは言ってあるが、表情にこそ出さないものの心配でしょうがない。

「そういやァ、どっかの海賊船がこっちに向かってるんだったか…」

随分と絆されたもんだと溜息とともに呟いて、ドフラミンゴは今入ってきたばかりの扉から再び外へ歩き始める。
ただでさえ広いその歩幅は、心なしかいつもより大きくなっているようだった。



「…フフッ、やっぱりか」

花屋が軒を連ねる港に辿り着いて、そう独り言ちる。
この町は花が特産品だから、港には鮮魚を扱う店と同じくらい花屋が多い。
そしてドフラミンゴの探し人は何よりも花が好きだから、冒険と称してはここにやってくるのが殆どなのだ。
当たりを付けて来てみれば案の定そこには目的の少女・ごんべがいて、ついでにこれもまた想定の範囲内だったが、彼女の目の前には海賊と思しき男達が数人立ちはだかっていた。

「お花、つぶしちゃだめ!!」
「あァ?なんだァこのガキは」
「て、はなさなきゃだめだよ!!」

誰に似たのか物怖じしない(というより怖いもの知らずすぎる)性格のごんべは、店先の花をぐしゃりと握り潰す海賊たちに啖呵を切っているところだ。
それを見て思わず笑みが深くなるが、これ以上彼女を危険にさらすつもりはないのでずんずんと大股で近付いて行った。
もちろん、普段ポケットに突っこまれている手は出した状態で、だ。

「うるせェガキだな、殺すか?」
「いや、小奇麗な顔してっから売り飛ばすのもありなんじゃねェか?」

けけ、と品のない笑いを浮かべる海賊たちと、それを目の前に腰に手を当てたまま仁王立ちする少女。
なかなか奇妙な光景ではあるが、それは海賊たちの手がごんべに伸ばされた瞬間幕を閉じることになった。

「フフフッ…誰の許可を得てごんべに触ろうとしてる?」
「ドフラミンゴ、この人たちお花いじめるわるい人だよ!!」
「あァ、分かってる。お仕置きしなきゃな?」

世間一般的にいえば、自分もその“わるい人”の中に入る気がしないでもないが。
す、と伸ばした右手によって、ごんべに手を伸ばしかけた姿勢のまま男の身体を制止させる。
左腕でごんべを抱き上げてぷんすかと膨らんだ頬にキスを落とせば、あとはドフラミンゴの独壇場だ。

「こいつはおれのモノだ」

手を出そうとした罪は重いぜ…?

目の前で繰り広げられる、味方同士が斬り付け合うという光景に恐怖するでもなく。
ドフラミンゴの腕の中で怒りっぱなしだったごんべは、全てが終わってドフラミンゴによって差し出された花を見た瞬間、嬉しそうに顔を綻ばせた。



より可憐なの笑顔


(何もかも全部、こいつの全てはおれだけのモノ)




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ドフラミンゴで幼女主とのリクエストを戴きました!!
台詞は「こいつはおれのモノだ」でした。
…が、幼女主を書くのは初めてだったので…ご、ご希望に沿えているでしょうか…心配です(゚Д゚;))
でも書くのは楽しかったです←
きい様、気に入らねぇぞこのやろう!!などありましたら遠慮なく叩き返して下さいませぇぇ!!
ここまで読んで頂きありがとうございました。




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