S×R 不死鳥連載 | ナノ


貴方の後を追うのが日課です


「やっぱりお前真っ白だったんだな!!」

この人は、エースさん。
私が最初にこの船に乗った時、マルコさんを呼びに来た人だった。
今は何をしているかというと、私を大きな桶に入れて洗ってくれている最中だ。

どうしてこうなったかの説明は簡単。
ご飯を貰ってからマルコさんと一緒にこの船の船長さん(私はあんなに大きな人間を見たのは初めてだったけれど、やっぱりとってもあったかい人だった)に挨拶をしたあと、汚れてるな、という話になって。
けどマルコさんは何やら忙しいらしく、誰かに頼もうということになり。
丁度その時ひょっこり現れたエースさんに、その役目が与えられたというわけだ。

「弟がいたから慣れてんだ!!」

嫌がられるかと思いきやエースさんは何故か乗り気で、自分でも汚いのが分かるくらい汚れているのにどうしてだろうと思っていたら、エースさんは楽しそうにそう言っていた。
そうして、今に至る。

わしゃわしゃと石鹸で洗われること3回。
ようやく本来の毛色を取り戻した私は、ちゃんと“白い大きな犬”になることができた。
水で泡を洗い流してもらって、よーし完了!!振れ!!と言われたのでその通り思いっきり身体をブルルッと振るわせた。
けれどどうやらタイミングを間違ってしまったようで、今度はその水を被ってエースさんがびしょ濡れになってしまう。
エースさんは、笑っていた。

「白ひげの船に乗る犬にはピッタリだな、お前は!!」

白くて、デカくて、あとは……わかんねェけど、あ!!お前アタマ良さそうだしな!!なんて。
白ひげというのは、さっきの船長さんのことだ。
船長さんの船にピッタリな犬だなんて。
家族として認めてもらえたみたいな気分になって、嬉しくて。
私は思わず、自分がまだ濡れたままなのも忘れてエースさんに飛び付いた。



「……で、何やってんだよいあいつらは」
「ビックリするくらい仲良くなってんなぁ……」

私の耳がマルコさんの声を、私の鼻がマルコさんの匂いを拾う。
一緒にいるのはサッチさんだ。
おっといけない、今私はエースさんの背中に乗っかっているんだった、油断したら……

「隙あり!!」
「ワン!!」
「あ、コラ待て逃げんな!!」

嬉しさのあまり飛び掛かったところからどうしてこうなったのか、いつの間にかじゃれ合いというには激し過ぎる取っ組み合いをしていた私とエースさん。
大きな私は立ち上がればエースさんと同じくらいの背丈になるから、私達の遊びは中々に壮絶だった。
がばちょ、と起き上がったエースさんに捕まらないように、私はマルコさん達がいる所まで走る。
激突する直前で足を止めてマルコさんを見上げれば、随分綺麗になったもんだよい、と首周りを撫ぜられた。

「お、何だマルコ終わったのか?」
「あァ、悪いな任せちまって」
「構わねェよ、楽しかったからな!!」
「美人になっちゃって……えーっと……そういやマルコ、この子名前は?」

サッチさんの言葉に、今度は私の頭を撫ぜていたマルコさんの手がはたと止まる。
そういえば、マルコさんは私の名前を知らない。
元々私にあった名前も、最初の海賊船で呼ばれていた名前も、あの島で付いた名前も。
本当は、本当の名前を知って欲しいけれど、どちらにしても今の私には伝える術がないのだ。

「……シロ」

ぽつり。
マルコさんが呟いた名前は、本当の名前ではなかったけれど。
少し眉間の皺が濃くなって、ちゃんと考えてくれたんだってことが分かったから、私にはそれで十分だった。

「こいつの名前は、シロだよい」
「シロか、いい名前だな!!」
「そうだなぁ、マルコにしちゃ良いセンス……ちょっとマルコさん足、サッチさんの足踏んでますよ」
「そうかよい」

行くよい、シロ。
呼ばれて私は、元気に一つ、返事をした。



貴方の後を追うのが日課です

貴方に呼んでもらえるなら、何処までだって付いて行きます。

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