S×R 鷹連載 | ナノ


037


「大将、ですか…」

目の前でぐーたらとテーブルに頬杖をついているのはやたらと背の高い男性。
その人の名前はクザンさん。
自称、海軍大将。
私は今、成り行きでその人と一緒にコーヒーを飲んでいるところである。

海軍大将と言えば、ミホークさんにこの世界について教えてもらった時に出てきた名称だ。
確か、海軍本部の最高戦力とか何とか。
悪魔の実っていうトンデモ人間になる実を食べた能力者で、それは3人いて、あとは何て説明をされたんだったか。
ともかく今まさに目の前にいるこの人は自ら海軍大将だと名乗ってきて、そのあまりのダラけっぷりはこの人の話を信じていいものか不安にさせる。
モットーがダラけきった正義って一体何なんだ。
仕事をサボって抜け出してきたと言っていたし、そもそも何故最高戦力とも言われる立場の人がこんな所にやってきたのか。
この町は、なにか重要な基点にでもなっているのだろうか。
飲む気があるのかないのか、さっきから角砂糖を落としたコーヒーをスプーンで延々と混ぜながらこっちを見ているクザンさんの真意は探れそうもないのだが。

「信じてないでしょ」
「失礼ですが信じろって方が無理な話と言いますか…」
「まァ、そう警戒しなさんな」

でも確かに、ダラけてはいるけれど俄かに感じる威圧感というか、そういったものでこの人が只者ではないことは分かる。
普段は何処までもマイペースなミホークさんだけど、あの人に最初に出会った時に感じたそれと同一の何か…言葉で表すのは難しいけれど、とにかくこの人はそこら辺の一般人とは違う、そんな空気を持っている気がする。

「信じる信じないは勝手だが…」

ふと、クザンさんの視線が鋭くなったような。
思わず身構えると、クザンさんはのんびりとした動作でティースプーンをくるくると回していた手をテーブルの下に突っ込んだ。
一体何が出てくるんだと、少し警戒してしまう。
まさか私は、考えなしに危ない人についてきてしまったのだろうか。

…かと、思いきや。

「とりあえず疲れた」

えぇぇ……
すぐに戻ってきた手にはアイマスクが握られていて、クザンさんはそれを装着すると背もたれに身体を預けてぐったりと寝始めてしまった。

「(わ、私は一体どうすれば…)」

目の前には、アイマスクを付けて眠る自称海軍大将と飲みかけのコーヒー。
ここは、町中のコーヒーショップ。

なんでか動けなくなってしまった私は、心の中でそっと、ミホークさんの名前を呼んでしまった。

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