S×R 鷹連載 | ナノ


031


ぼーっとケータイを眺めていたせいか、私はいつの間にか船の揺れが落ち着いていることだとか自分がまだ服を着ていないことだとか、色んなことが頭からすっぽ抜けていたようだ。

「時化は抜けた…ごんべ、こんなところにいたのか」
「え、あ、ミホークさん」
「そんな恰好で何をしている」
「そんな恰好、って………!!!!!」

私を探すようにひょっこりと姿を現したミホークさんは、怪訝そうな顔つきでこっちを見ていて。
その言葉にミホークさんの視線を辿ってみれば、そこにはタオルを巻いただけの自分の体があった。

「それはなんだ?」
「これはケータイ…じゃなくてミホークさんそれ以上近付かないでください!!」
「何故だ」
「何故って服!!服を着るから待って!!!」
「おい、そう押すな」

一体どれだけの時間、ケータイを見つめて無心になっていたのか。
数秒を要してようやく事態を把握した私はやっと我に返って、ミホークさんを慌てて押し出したあと恐らく人生で最高のスピードで服を身に付けた。
なんで、なんであんなに平然としているんだあの人は!!
ともかく急いで身支度を整えて、髪は濡れたままだけどとりあえずタオルを肩にひっかけて脱衣所を出る。
ベッドに腰かけていたミホークさんは、どことなーくご機嫌斜めな様子でこっちを見ていた。

「一体何だ」
「何だって…私にだって恥じらいというものがあるというかなんというか…」

さっきの状況を思い出して、なんだか顔が熱くなる。
寝るときに抱き枕のような扱いはされているけれど、それと裸(といっても断じて真っ裸ではない、ちゃんとバスタオルを巻いていた)を見られるのとは話が別なのだ。
…と、思っているのはもしかして私だけなんだろうか。
まぁ確かに、お世辞にも私はナイスバディなお姉サマとは言えないごく平均的な体型だから、ミホークさんにとっては何のことはないただのハプニングなのかもしれないけれども。
今更だけどきっとこの人とは年齢に差があるから、経験値の差からしてこの程度のことは気にする程の事ではないのかもしれないけども。
ただ一言言わせてもらうならば、私にとっては一大事なのだ。

相変わらずミホークさんが何を考えているのか分からないけれど、その表情は少し不満そうで、それは話を途中で遮られたからなのか私の態度が原因なのかさっぱりだった。

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