S×R 鷹連載 | ナノ


025


上陸したそこは、一見平和に見える町ではあった。
けれど民家や商店にはどの窓にも鉄や木材で補強が施されていて、窓を開けているところは殆ど見当たらなかった。
大通りを歩けば、どうみても海賊には見えないような人達まで腰に銃や剣を携帯しているのが目立つ。
それなりに栄えてはいるようだけど、一つ前に訪れた町とは似ても似つかない、そんな重々しい雰囲気が漂っていた。

「この島は賞金稼ぎと海賊の衝突が激しい」
「賞金稼ぎ、ですか」
「…あの男もそうだろう」
「あの銃を持ってる人ですか?」
「ふむ…探せばそこらじゅうにいるはずだ」

ミホークさん曰く、ここは賞金稼ぎが海賊を待ち伏せる一つのポイントになっている島だそうだ。
大海賊時代に入って以降、大きな島の近くにある比較的人口の少ない島がこうなることは珍しくないらしい。
危険ではあるけれど、それでも金は回るから商売が潰れて町が廃れることはないのだと。

ミホークさんに言われて、なるほど一つも閉まっている店がないことに気付く。
食料を扱う店も武器を扱う店も生活必需品を扱っているだろう店も、いざという時店に被害が及ばないように補強はしてあるけれど閉店しているわけではない。
実際何人かの人が出入りしているのが見えるし、通りにも人は沢山いた。

「…治安が悪いって、そういうことだったんですね」
「小物同士の諍いに巻き込まれるのは面倒だ。早めに立ち去るとしよう」
「まずは必要物資の補給ですね!」
「うむ」

ミホークさんは端的にいえば海賊を取り締まる海賊、ではあるけれど、それ以前にとてもマイペースな人だから、気分が乗らない時に厄介事に巻き込まれるのは面倒くさいと思っているのだろう。
実際に巻き込まれればそれなりの対処はするんだろうけれど、それについては今更突っ込む気はないので、私はミホークさんから離れないように注意しながら買い出しに付いて回ることにした。
治安が悪いとは言え、さすがお金が回っているだけあって各々の店の品ぞろえはまずまずだった(といっても相場がそれほどのものか知らない私にとっては、前の島と比べるほかないのだけど)。
あの船に簡易キッチンが備え付けてあることも分かったから、今回は腐りにくい食材を多めに買ってもらうことにする。
今まではそのまま食べられるようなものがほとんどだったけれど、せっかく作れる環境があるなら作りたいと思ったのだ。
一応確認してみれば、この島を出た後はまたしばらく航海が続くらしいから丁度いいだろう。
ぶっちゃけてしまえば今の所自分にできることと言ったらそれくらいしかないし、幸いミホークさんも私が料理することに関しては賛成してくれているから頑張るつもりだ。

「ミホークさんて嫌いなものとかありますか?」
「特にはない」
「んー、じゃ、肉と魚ならどっち派ですか?」
「………肉だな」
「わかりました!!」

どんな料理が食べたいか、なんてミホークさんの希望も聞きながら食材を選ぶのはなかなか楽しい。
自炊生活をしていて良かったと、心の底から思えた瞬間だった。

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