S×R 鷹連載 | ナノ


021


武器屋を出た後真っ直ぐ宿屋に戻って、私は今ミホークさんから渡された刀を手に固まっていた。

「…使うことにならなければいいが。念の為だ」

その刀はお前に合う、と。
そう言って、ミホークさんは私にさっきの刀を手渡した。
確かに海賊がそこらじゅうにいるような世界だ、この世界で通用するにしろしないにしろ、多少なりとも剣を扱えるのなら護身用に武器を持っておいて悪いことはないだろう。
でも何の前触れもなく、どうして突然そんなことになったのだろう。
武器屋でも言っていた、念のためというのは一体何のことなのだろうか。

「…おれはお前を一人にするつもりはないが、いつ何が起きるかは分からん」

ここはそういう海だ、と。
実際この島に来る直前海賊からの襲撃もあったし、政府直属の大海賊っていうくらいだから、もしかしたら私の知り得ない危険が常に身近にあるのかもしれない。
そんなことを考えている私と、ミホークさんの考えは食い違っていたんだろう。
ミホークさんは私の目を見据えると、刀を握ったまま固まっている私の手にその大きな左手をそっと添えた。

「そこらの小物など気にしちゃいない…だが」
「…?」
「…奴には、気を付けろ」
「!!奴、って…」
「あの男はどうやらお前に興味を持ったらしい。手の内の読めない奴だ…何をするか分からん」

ミホークさんの言葉で私の脳裏に一瞬にして蘇った、あの酒場での記憶。
酒場で出会った、あの得体のしれない男の記憶。
ダイレクトに言われた訳ではないけど、ミホークさんがあの人のことを言っているんだろうということは嫌でも分かった。
ミホークさんとは顔見知りらしいあの人。
私に、おれの所へ来いと言った人。

「私は、ぜったい、あの人の所には行きません」
「おれとて渡すつもりはない。ただ、」



念のためだ。
ミホークさんがそう言ったのと、私の手に添えられた大きな手に力がこもったのとは同時だった。


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