S×R 鷹連載 | ナノ


009


街で必要なものを買い揃えるというミホークさんに付いて回って、私は今一人で港に立っている。
足元には、昨日買ってもらった服を小さくまとめて入れた鞄(いつの間にか用意してくれていた)と、道すがら買い足した携帯食料やら何やらが入った袋が置いてある。
ここで待っていろ、と言われて言われた通り待っているのだけど、一体私は何を待てば良いのだろう。
海賊と言うからには移動手段は船なんだろうけど、ミホークさんは一人旅だと言っていたからそれがどんなものなのか想像もつかない。
港にはたくさんの船が停泊していて、そのどれも私のいた世界では目にすることのないような代物。
クルーザーとか豪華客船とか、そういったものとは程遠い…それこそ某海賊映画に出てくるような帆船ばかりだ。
そんな光景を目にして、ドキドキなのかワクワクなのかただの不安なのかよくわからない感覚に苛まれながら突っ立っていれば、横に人が立つ気配。

「行くぞ」
「あ、は…いいぃぃい!!?」
「なんだ喧しいな」
「なんで!なんで私まで荷物と一緒に持ち上げるんですか!!」

見上げた先には案の定ミホークさんがいて、返事をしながら荷物を持ち上げようと屈んだ瞬間。
私は荷物と一緒にミホークさんの左腕に抱えられてしまった。

「帆船に乗るのは初めてだろう」
「そうですけども!!」
「ならばアレに乗るのは簡単ではない」
「アレってな…に……アレですか」
「アレだ」

落とされない程度にじたばたとしていたけれど、ミホークさんが指さした先にあるものを見てしまっては大人しくならざるを得なかった。

「…マジですか」
「あぁ」

大きな船から小さな船、様々な帆船が停泊する港でひと際目立つ…ひと際小さな…船。
棺のような形をしたそれは、驚愕する私のことなど意に介さないようにぷかぷかと浮いていた。

「行くぞ」
「ままま待って下さい心の準備心の準備っっ!!!!!」

私を軽々と抱えたまますたすたと歩くミホークさんを止めようとするも、それは叶わなかった。
桟橋の縁にたどり着いたミホークさんはひょいと船に飛び移ってしまったのだ。
人一人を抱えているのになんて身軽なんだろう。
いやそれよりも。

「あ、あの、失礼ながら少々怖いのですが…」
「安心しろ、沈みはせん」

いやそういう意味ではなく。
船の真ん中で放心する私を余所に、ミホークさんは手際よくロープを解いて帆を張ってゆく。
風を受けて徐々に進みだした船は見る間に陸から遠ざかって行って、私はついに大海原に初進出を果たしてしまった。






「…ミホークさん」
「なんだ」
「あの、私は一体どこに落ち着けばよいでしょうか」
「……膝の上にでも座るか?」
「けけけ結構です背中向けて失礼かとは存じますがここに落ち着かせて頂きますっ!!」
「そうか(…面白い奴だな)」

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