S×R 鷹連載 | ナノ


007


私は本当に、とんでもなく現実離れした世界にやってきたようだ。

この世界を纏めるのは世界政府。
今は大海賊時代と呼ばれ、海賊王の名を求め世界の海には数多の海賊たちが蠢いている。
とりわけ海賊王を目指す者には避けて通れない、私が流されてきたグランドラインと呼ばれる海には三大勢力なるものが存在していて、それらが均衡を保つことで世界の平穏が維持されているらしい。
一つは世界政府直属の海上治安維持組織、海軍本部。
一つは世界政府公認の7人の海賊、王下七武海。
そして、グランドライン後半の海“新世界”に皇帝のごとく君臨する4人の海賊、四皇。
ミホークさんの話を要約すると、こんなところだ。

「…分かったか?」
「……………非常に信じがたいですが理解はしました」

しかもこの目の前のダンディズムはただの海賊じゃなかったのだ。
王下七武海の一人、“鷹の目のミホーク”。
世界政府公認で、三大勢力とまで言われるような地位にあって、世界に7人しかいない、そんな大海賊。
本当に私は、とんでもない世界にやってきてとんでもない人物に拾われたみたいだ。

「今…本当に異世界にきたんだなぁっていうのをしみじみと噛み締めてます」

でも、これで色々と疑問が解決した。
彼が大きな刀を背負っている訳も、異海人について知っていた訳も。
この島の人かと思っていたら実は違った(これは宿に来て初めて気付いたんだけど)訳も、ただならぬ存在感を放っている訳も。
私が武芸を嗜む人間だと見抜いた訳も、何故かその金色に射抜かれると全てを見透かされたような気分になる訳も。
あんな大金をポンと出せた訳も、こんな部屋に通された訳も、あのおじさんの態度の訳も、全部。
もしかしたら、私が着替えてからもずっと街中で好奇の視線を向けられていたのは、カピカピになった髪のせいだけではなかったのかもしれない。
きっと、この人と並んで歩いて、普通に話していたからだったんだろう。
それじゃミホークさんは有名人なんですかと聞いたら、それなりに、と興味無さそうに言っていたから。

「今日はこの程度でよかろう」

コトリ、静かになった部屋に、ミホークさんの手の中にあったグラスがテーブルとぶつかる小さな音が響く。
それと共に届いた声に顔を上げれば、腕を組んだミホークさんと目が合った。

「疲れているだろう。風呂にでも入って休め」

くい、とバスルーム(があるらしい方向)を顎でしゃくり、ミホークさんはテーブルの上に足を乗せた。
物凄く行儀が悪い筈なのにどうしてこう優雅に見えるんだろう。

「えっと…じゃあ、お先に失礼します…?」
「あぁ」

…………ん?

「あの…別に文句があるとかそういうんじゃないんですけど…もしかして同室ですか?」
「二人と伝えたんだがな」

それを聞いた私は、すぐさま立ち上がってバスルームとは別のドアを開け放った。
そしてそこに広がった光景を見て、がっくしと項垂れた。

「ミホークさん…これ、絶対勘違いされてると思います…」
「らしいな」

寝室には、丁寧に整えられた無駄に大きなベッド…に、仲良く二つの枕が並べられていた。





「気にするほどのことでもないだろう」
「…そうでしょうか(こう見えても花の女子大生なんですよ…!!)」
「捕って食いはせんから安心しろ」
「ああああ当たり前です!!!」

(本当になんてマイペースな人なんだ…!!)

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