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「…お前、ケータイ持ってねェの?」

「ねェ」

総悟がコクリと頷く。
俺はそんな総悟を抱き起こし、体の隅から隅までまさぐってみた。

「…何すんでィ」

「………おま、どーすんだよ連絡取れねぇじゃねーか!」

ここは今は使わねぇ寂れた地下倉庫だぞ?人なんか誰も寄り付かないだろう。だが誰かの手を借りなきゃ…入口は塞がっちまってるし流石に俺と総悟だけじゃあの山は…。

「はァ…まいった。とんだ災難だな、こりゃ」

再びその場に腰を降ろし積み上げられた段ボール箱を背に凭れる。フゥーッと煙草の煙を吐くと隣の総悟がけほけほと噎せた。

「ちょっと、煙草やめなせェ。窓もねーのに」

「いいじゃねェかちっとくらい。通気口がある」

「あんなのあったって変わりゃしねーでしょ!貸しなせェ!」

「ちょ、こら」

総悟が俺から煙草を奪おうと手を延ばす。それを緩く振り払う俺。すると総悟はムッとした顔でまた手を延ばす。

「ちょ、おいやめろって…わかった消すから待て…うわ!」

ゴン、と後頭部に鈍い痛みが走る。反転した視界の先にはひび割れたコンクリートの天井と、俺を見下ろす総悟の顔。

「いてて…何すんだよ危ねーだろ!てか重てェ!こら退けって」

「…いやでィ」

「はぁー…ったく何なんだよお前は…」

「……か」

「あぁ?」

「…………」

俺の腹に乗っかったまま、総悟が俯く。さらりと前髪が垂れて、その大きな瞳を隠した。

「…総悟?」

どうしたんだ?
何やら様子のおかしい総悟に問いかけると、頭を上げた総悟の顔を見てギョッとした。

「…アンタ、嫌な顔してばっか」

ぽそり、呟いた総悟の薄い唇が小さく震えて、俺を見つめる瞳が悲しげにゆらゆらと揺れる。赤くなった目尻は今にも涙を溢しそうで…

「お前、何泣きそうになってんだ…?」

「…な、泣いたりなんか…しねぇ…」

「でもお前ほら、目が」

「うるせー!しね!土方!」

俺の言葉を遮って放たれた悪態。だがその言葉とは裏腹に総悟の顔はくしゃりと歪み…遂には大きな瞳からぽろりと涙が溢れ落ちた。

「お、おい総悟…?」

焦った俺は上体を起こし、総悟の肩を抱き寄せる。すると総悟は俺の胸に頭を押し付けて消え入りそうな小さな声で呟いた。

「土方さんは俺といて、楽しくないですかィ…」

「え?」

「俺…俺は、アンタとこうして傍に居れるだけで…嬉しい、のに…」

きゅっと俺の着物の袖を掴む細く小さな手。胸に押し付けられた亜麻色の頭が揺れて、すん…と鼻を啜る音が聞こえた。

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