吹き込んで来た風に煽られた前髪が邪魔で、左手で押さえる。午後になって肌寒くなってきたし窓閉めたいんだけど、左には奴が…。奴を介さねば窓を閉めることは叶わぬ…。奴とは勿論ここ数日で私の中の「いつかぶん殴りたいランキング」ぶっちぎり一位の座に輝いた亜風炉照美である。
勝手に閉めに行ってもいいけどわざわざ席立つのも嫌だしな…でも奴に頼むぐらいならいっそそうした方が格段に精神衛生上よろしい。前髪をサイドにキープしつつシャーペンを走らせながらだらだら迷っていると一段と冷たい風が教科書を捲った。もう無理閉める。
左を向くと、自称完全無欠の神(笑)は何と肘をついてまどろんでいなさった。散々人を馬鹿にしてる自分が寝てたらざまあねえな神様よお…。無駄に安らかな寝顔にイラッとしながらも腰を上げかけたが、うっすら発光すらしそうなくらい綺麗な光景に動きを止める。
黙っていれば…ってフレーズをよく聞くけどまさにその通りだと思う。第一印象だけならとんでもない美人さんだったのだ、この男は。痛みなど微塵もないキューティクルヘアーは優雅に靡いている。女であるはずの私がこれっぽっちも持っていないものを全部当然のように手中に収めるこいつは生まれる性別を間違って来たんじゃないだろうか。マジで。
悔しいながらも見入っていると、人形みたいな長い睫が突然ぱっちり持ち上がった。

「不快だからこっち見ないでくれる」

ほんと…これさえなければ…。


101231
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