「今日はいよいよ、忍たまとくのたま、上級生全員での合同演習です」

若い姿のシナ先生が、そう言って手を叩く。一週間前から予告されていたことだが、ここ数日色々なことが立て続けに起こったせいですっかり忘れてしまい、心の準備も碌に出来ないまま当日を迎えてしまった。しかし、どんな理由があろうとも失敗は許されない。両頬を軽く叩き気を引き締めた。

演習の内容は至って単純だ。男女二人で組になり与えられた札を守り抜くというもので、札を奪われればその時点で失格となる。制限時間内により多く札を奪取できた組は当然成績に加算されるため、積極的に狙うもよし、ひたすら守りに入るもよし、作戦と戦闘力が総合して試される。武器に制限は無い。

誰と組むか、運命を左右するくじが私にも回って来た。書かれていた番号は二番。相手は誰かと周りを見回す。ちらりと目に入った緑の装束に思わず眉をしかめた。せめて、組むのがあの人ではなければいい「私の相手は名前か!」のに…。

「七松先輩…」

まさか、そんな物語のようなことが起こりうるはずないと思いながらも先輩の手の中にも二と書かれた紙。今度は何を言われるのかと身構えるも、先輩は至って自然に「今日はよろしくな!」と私の肩を叩いてきた。先日何もなかったかのようなその態度に拍子抜けしたが、ならば私が一方的に意識するのもおかしいだろうと思い、事務的に挨拶を返す。

「…いえ、こちらこそ。足手纏いにならないよう精一杯努力します」
「おう、絶対勝とう!」

開始地点に移動し合図を待つまでの間、作戦を話し合いながら、ふと自分に問いかける。さっき七松先輩に会った一瞬、私は何を期待していた?

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