ななまつこへいた。
たった八文字を口の中で反復するも全くと言っていいほど何の感慨も湧きはしない。私が彼について持っている情報はと言えば六年ろ組、体育委員長、そして暴君と噂されていることのみで、面識もなければ話したことすらないから当たり前と言えば当たり前なのだが、よりによってどうしてその七松小平太…先輩、が、私の見合い相手として突如その名を浮かび上がらせたのか。考えてみるも答えなど出てくるはずもなく、私にできるのはいかにしてこの縁談を切り抜けるか、その対策を考えることのみである。
策を立てるにはまず対象の観察からと、耳が痛くなるほど説かれてきた。校庭を見渡すことのできる教室に陣取り窓の外を眺めれば、委員会活動に勤しむ七松先輩の姿を発見した。苦無を手に凄い速度で塹壕を掘り進めていく彼の人が、私の伴侶となるらしい。

しかし、後輩の涙ながらの制止を物ともせず、泥だらけの笑顔を浮かべるあの人の背中をしずしずと三歩下がって付いていく自分の姿が、今の私には想像も出来ない。

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