「名字さんにお手紙で〜す」

笑顔の小松田さんから封書を渡され、裏に書かれた差出人の名を見て思わず溜め息をついた。行儀見習いとしてこの学年に籍を置き早四年。目的を同じくしていた友人が次々と学園を去っていく中、私は両親の再三の呼びかけにも応じずだらだらと居座っている。あんな田舎で知らない男と添い遂げ一生を終えるよりも、たとえ厳しかろうが忍として生きていきたい。この願望が夢物語に等しいものだとは分かっていても、子どもの私には反発する以外の手段が見つからないのが事実である。

急いで自分の部屋に部屋に戻り封を切った。どうせ中には帰省を要求する旨が延々と書かれているのだろうと知っていても、読まずに捨てることができないのが私の弱いところだ。前の春期休暇は結局一度も顔を見せず仕舞いだったからそれに対する恨み節も含まれているかもしれない。ざっと目をしてみたところ大体の内容は予想と大差ないものだったが、文末から五行目にそう軽々とは読み飛ばせない文言があった。『貴女の見合いの日取りが決まりました』紙に皺が出来るほど強く握りしめ、その先を追う。

『相手は━━━━』

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