※財前が残念


皆さんこんにちは、今日も髪の毛ツンツンな浪速のクールボーイ財前光です。突然ですが俺は今猛烈に焦っています。なぜかと言うと、隣の席の名字さん…今年一緒のクラスになった、今どきケバいメイクもせず制服も着崩さず必要以上に自分を飾らない、それでいて清潔感溢れる素直で可愛らしい女の子です。実を言うとちょっと気になってたりします。その名字さんがですね、さっきからずっと、俺が科学の限界を超えてやって来た電子の歌姫に歌わせて某動画サイトに投稿した曲を歌っているからです。え、ちょ、これ…どういうこと?

予想の遙か斜め上を行く出来事に俺の頭はフリーズしかけやったけど部活で鍛えた精神力で何とか現実に舞い戻った。よし、まずは落ち着け俺。平常心や。日常生活において他人の鼻歌とか特に気にするもんでもないし、第一俺が趣味は作曲(キリッ)とか言っときながらパソコンに向かってポチポチ電子音声打ち込んでることなんか誰も知らんねんからこの場合は何ら深追いすることなくスルーに限る。よし。と思いながらも指は勝手に耳に差し込んでたミュージックプレイヤーの電源を切った。めっちゃ本能に忠実。

それからしばらく名字さんの歌声を堪能するタイムやってんけど新たな問題が発生した。…名字さんそこ歌詞微妙にちゃうねん…。音も若干ずれてんねん…。名字さんの歌声はそれはそれは可愛らしいねんけど、そこ特に苦労したとこやし譲られへんうp主根性的なもんが、あんねん…。でもここでうっかり指摘してもうたら何か色々終わりそうな気がする。から我慢する。でも気になる。気にせんとこうと思えば思うほどますます気になる。なんという悪循環…修正したくても出来ない自分の立場が歯痒い…!あああああだからそこも歌詞ちゃうし…!

「歌詞、ちゃうし…」
「え?」
「え?」

…え?名字さんキョトーンとした顔で俺の方見てんねんけど…口に出してた?…え?

「財前君、この曲知ってんの?」

頭の中は一瞬にしてorz弾幕の出来あがりです本当に(ry

「ああ…まあちょっとな…」

ちょっとどころじゃないけどな!誰よりもよく知ってる自信あるけどな!とは言えるはずもなく咄嗟に返事したけど内心バックバクな俺かっこわるい。絶対顔引きつってるし目泳ぎまくっとる。そんな軽く不審者な俺に引くこともなく名字さんはにっこり笑った。

「この曲な、昨日ネットしてたら出て来てんけど、お気に入りに入れとかへんかったから何の曲か分からへんかってん!財前君知ってるんやったらタイトル教えてくれへん?」

く…食いついてきはった…!予想外の反応に思わずにやけそうになるのを押さえて、俺の脳内は新たな展開に対する喧々諤々の会議を勃発させる。議題:『名字さんは本当に偶然ネットの波で遭遇した俺の曲をいいって言ってくれてるんかそれとも実は隠れでカモフラージュのために取り繕ってるんか』…さあどっちや!
もしここで俺が曲名を教えたとして「財前君こういうの詳しいんやねー」ってオタクのレッテルを貼られてしまったら俺明日から学校来られへんし、でも実は名字さん意外にこっち側の人で大々的に釣り針を仕掛けてるっていう可能性も捨てきれないわけで、万が一そうやとしたらこの機会を逃せば今後二度とこの話ができるチャンスは訪れんわけで…どうする!?どうする俺!?ホイホイされたろかマジで!

たたかう
まほう
いってまえ←

「その曲データ持ってるからよかったらCDに焼こか?」
「…え!いいん!?ありがとー!」

…よかっ……たあああああ!引かれへんかった!若干の間はあったけど!さっきちょっととか言ってたくせに音源持ってるという盛大な矛盾に気付かず笑顔でお礼を言ってくれはる名字さん!あんたが女神か!あえて触れなかったという可能性についてはこの際考えへん!俺はガッツポーズしそうなほど舞い上がってるのを必死で無表情な感じに保ちながらもちょっとだけ口角を上げた。「じゃあ明日持ってくるわ」どうしよう俺ってば超クール!

それからチャイム鳴るまで曲についてちょっと喋って、ついでにメアドもゲットしました。ありがとう初音。次はベッタベタなラブソング歌わしたるからな。


100731
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