06

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「見ろよ、飛行訓練はグリフィンドールと合同らしい」

ピーブスによる目覚ましにも慣れてきた頃、寮のお知らせ掲示板を見ながらドラコがそう言った。とても楽しそうだ。

「ウィーズリーは骨董品並みの箒しか持ってないだろうし、ポッターはマグル育ちで箒すら触ったことも無いだろうさ。
ああ、掃除をするために使う事はあったろうな」

ドラコはニヤニヤと笑みを絶やさずこちらを振り返る。「そうだな」と同意すれば彼は満足だろうがそうはいかない。

「ドラコも気を付けろよ。お前の握り方クセがあるから注意されるぞ」

「僕のは自分に合った握り方を研究した結果だ。……身長が伸びれば規定の握りに直す」

彼はぶすっといじけたようにそっぽを向いた。背が低い事をコンプレックスにしているのは周知の事実なので何も言わないでおこう。

「グレゴリーはどうなんだい? 僕は君が箒に乗っている所を見た事がない」

ドラコは今まで黙っていたグレゴリーに話を振った。グレゴリーは読んでいた本から視線を上げる。そういえば俺も見た事がない。

「……それなりに?」

「「へぇ……」」

グレゴリーが箒に乗っている所を想像してみた。しかし、脳裏に浮かんだのは箒の上で日向ぼっこをする彼だった。つまりグレゴリーが箒で空中を俊敏に動く所を想像できない。
まあ、もしグレゴリーが予想よりも上手く箒を操っていたとしてもあまり驚かないような気もするが。





授業ではドラコが予想通り握りを注意された。それなり、と言うだけあってグレゴリーは箒の扱いに手馴れていいたし、俺も難なく箒を従わせた。
箒も使い手を選ぶ。その為箒は自分を上手く扱える技量を持つ者にしか従わない。
そういう意味では、初めての実演で箒を従わせたハリー・ポッターにはそれに見合った才があるのが伺えた。

しかし、その才能を見る前に授業が中断された。グリフィンドールのネビル・ロングボトムが箒から落ちるというアクシデントがあったせいだ。
教授の付き添いでネビルは折れた手首を押さえ、泣きながら医務室へ向かった。

「ごらんよ! ロングボトムのばあさんが送ってきたバカ玉だ」

どこからか拾ってきたネビルの思い出し玉を持ってドラコがこちらへ持ってやって来た。何やらニヤニヤしている。
大方、自分が思い出し玉を握って赤い煙が出なかったことに喜んでるのだろう。他のスリザリンの面子が寄ってきて、ネビルの思い出し玉を覗き込んでいる。

「マルフォイ、こっちに渡してもらおう」

思い出し玉を囲んで騒いでいた声がピタリと止む。ポッターが静かな声で今の事を言ったからだ。皆が自ずとマルフォイとポッターを結ぶ道を空けた。



ニヤリと、ドラコがうっそりと笑った。
さっきの嬉しそうな笑みとはまた違う。
そう、これだ。
俺はこんなドラコの一面に惚れ込んだんだ。

じゃなきゃ俺が、こんなお坊ちゃまの近くに居座る事は無い。
他人とは違う反応を示すドラコは、やはり他人とは違った。だから他人とは違う俺ともやっていけると確信した。
潰されないと、確信した。



「それじゃ、ロングボトムが後で取りに来られる場所に置いておくよ。そうだな――木の上なんてどうだい?」

「こっちに渡せったら!」

ドラコとポッターの言い争いに我に返った。
実際の所はドラコの挑発にポッターが乗せられている所だったが。

今にも掴みかかりそうなポッターに気付いたドラコは、持っていた箒に乗って空へ飛び上がった。流れる様な箒捌きに口笛を鳴らす。
ふと家で練習していたドラコの姿を思い出した。裏で努力をして、公衆の面前ではなんて事の無いように振る舞う彼は本当にプライドの塊と言っても良いだろう。

「ここまで取りに来いよ、ポッター。それとも怖いのか?」

「ダメ! フーチ先生が仰ったでしょう、動いちゃいけないって。私たちみんなが迷惑するのよ」

Miss.グレンジャーの叫びも聞く事無く、ポッターはそのままドラコを追って空へ舞い上がる。こちらも初めてとは思えないほどの技量だ。
箒を従わせる段階から気付いてはいたが、これは予想の範疇を超えていた。これなら今のドラコと張れるくらいの飛行だ。いや、ドラコ以上と言った方が正しい。

「上手いね、彼」

「グレゴリーとどっちが上手い?」

「ポッターかな。俺、そんな頻繁に乗らないし」

「そうか」

グレゴリーも珍しく感嘆の意を示している。頭上ではドラコとポッターの空中戦が繰り広げられている。するとドラコが思い出し玉を勢いよく遠くへ投げてこちらに戻ってきた。
着地に失敗する事も無く隣に降り立ったドラコは、すかさず思い出し玉をキャッチしようとするポッターを目で追い始めた。

「アイツ、中々やるじゃないか」

ポッターが思い出し玉を割らずにキャッチするや否や、ドラコが苦々しげに言った。
驚いている風体ではない。多分彼はポッターがキャッチする事を予想していたのだろう。

「意外だな、ドラコが他人の能力を認めるなんて」

「馬鹿言え、相手の能力を正しく理解してこそ活路が見えるんだ。この僕が過大評価も過小評価もするもんか」

なんの活路なのか問いただしたい。まあ多分ドラコの父親の口癖か何かだ。
いつの間にか来ていたマクゴナガル先生に連れて行かれるポッターを見物しながら、これでポッターが退学になったらドラコはどうするのかと俺は考えてみた。
その時になってみないと分からない事ではあるが、つまらなそうな顔をするに違いない。そして本人は否定するだろうな。





これがライバルって奴かな




(下手なクィディッチ選手より上手いんじゃないか?)
(だったら僕が寮代表選手になるのが道理なんだけどね)
(……一年はダメって)
(ホント、そこに関してこの学校はどうかしている)


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