慣合何悪inTOIr

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慣合何悪のセト君たちがイノセンスの世界に行ったらという妄想。rとは言っていますが今回の導入部分ではr要素全く無し。
セト君視点でハスタと行動を共にしています。しかし最初だけはスパーダ視点。もう何が何だか。妄想中はとても楽しかった。

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- スパーダside -

リカルドが撃った弾は、対象であるハスタに当たることなく弾かれた。一瞬、ハスタが実弾をはじいたのかと思ったが、そうでは無かった。

「リカルド、その辺にしませんか?」

リカルドとハスタの間に入ったのは、二十代程の男。リカルドの首筋に剣をあてがい、ハスタの槍の刃が無い部分を掴んで動きを止めている。

「セト……」

「私たちは自分の仕事を終わらせたからこちらに来たんです。でもまあ、助けは不要でしたね」

ちらりと俺たちを見たセトと呼ばれた男は、俺たちを馬鹿にするようにそう言った。一気に怒りで血が上るのを感じる。しかし、イリアとルカに引っ張られる形でその場を去ることになった。

「放せ! あんにゃろ、一泡ふかせてやる!」

「馬っ鹿! 今は逃げるのよ!」

引き摺られながらも、セトと呼ばれた奴を睨む。予想とは違い、奴は俺を見ていた。

ニコリと、笑った。

嘲るような笑みなら怒りを覚えただろう。しかし奴は、何故か嬉しそうに笑ったのだ。
俺は思わず驚いてしまい、その後は二人に引き摺られるままになった。

- スパーダside 終 -



「助けに来た、というよりも邪魔しに来た様子だったがな。どけセト。俺はハスタを蜂の巣にする義務がある」

子ども三人、多分あれは異能者捕縛適応法によって送られてきた兵士だろう。彼らがいなくなってからリカルドが口を開いた。銃口がこちらに向く前に刃を首にあてがったので、彼が動くことはない。そんなリカルドににっこりと笑った。

「嫌です。ハスタのいつものお茶目じゃないですか。そのくらい目を瞑ってあげても良いでしょう?」

ギリ、とハスタの槍が動くが、決して放さないようにと強く握る。リカルドもそれに気付いたのだろう、眉をひそめるが銃を構えることはない。

「度が過ぎる」

「……だそうですよハスタ。譲歩して頂くことは?」

「譲歩? 朝飯のおかずにそんなのがあったっけね」

「そんなもの自分が食ってやった、だそうです。ちなみに朝食は乾パンと水とビーフジャーキーでした。個人的にビーフジャーキーの塩加減が丁度良かったですね」

「そんな情報望んでいない」

「私もこんな状況望んでいません。リカルドが殆ど掃除したと言っても、ここは敵陣です。内輪揉めをするには場所が悪い。ハスタ、貴方も分かるでしょう?」

先程私がハスタの槍の動きを無理やり止めたあたりから彼の興味は削がれたらしい。今は然程力を入れずとも槍を押さえられている。そんなハスタに質問を投げかけると、彼は欠伸をしながらどうでも良さそうに口を開いた。

「キミだってオレさまの事分かってる癖に。そんなのオレには関係ない。そうだろう?」

「ええ、貴方はそれを物ともしない実力の持ち主である事は重々承知してます。つまり逆を言えば、ここでなくとも良いという事。今は同じ依頼主の元に属しているのですから、じゃれ合いはまたの機会に」

「じゃれ合い……ハハッ! 笑わせないでおくれ我が相棒セト公よ! これは殺し合いだ。正真正銘命の盗り合いだ。それをじゃれ合いだなんて、的を射すぎてお腹に穴が開いてしまうじゃないか!」

「貴方ほどの実力者に相棒と呼ばれる事を光栄に思いますが、お腹に穴を開けるのは止してください。今後の作戦に支障が出ます」

もう大丈夫だろうと当りを付けて握っていたハスタの槍を放す。思った通りハスタは槍を肩に担いで口笛を吹きながらあらぬ方向を見やっている。しかし、まだリカルドの首からは刃を離さない。それを疑問に思っているのだろう、リカルドの眉間の皺は深くなるばかりだ。

「おいセト」

「ああ、すみません。もう少し我慢してください」

そのまま、先ほどまでハスタの槍を持っていた方の手で足に吊るしている小型ナイフを手に取る。取った動きのままリカルドの背後から照準を合わせていたレグヌム兵に向かって投擲する。間も無く兵の呻き声と人が倒れる音がした。

「すみません、丁度あちらからはリカルドが一人でじっと立っているように見えていたようだったので利用させて頂きました」

「……まあ、ここは感謝しておこう」

首元から刃を離してクルリと一回ししてホルダーに戻した。

「ではこのまま任務続行という事で、まあ正直貴方がどんな任務を賜ったのか知りませんが」

いつの間にか離れていたのか、遠くの方からハスタの「セト公〜」と呼ぶ声が聞こえた。
その声を聞いて「はいはい」と言ってハスタの元へ足を向ける。正直ハスタが何故こちらに来たがったかいまだによく分かっていない。掃除が終わって拠点に戻る途中、急に「リカルド先生の所に行こうぜ!」とキラキラした目で言ったのだ。思わず「はぁ?」と言ってしまった。
今ハスタは行く軍人通る軍人をザクザクと、文字通り突き進んでいる。

「気分が優れないのですか?」

「なんかぁ、セト公が来てから興が削がれたもんでぇ」

「それはすみません。しかしこのままあの態度ではリカルドに煙たがれますよ?」

「それが目的と言ったら、セト公はどうする?」

ニヤリを笑みを浮かべてこちらを振り向くハスタ。ついでと言わんばかりに自慢の槍を振るってくる。それを逆手に持った短剣で防ぐと同時に甲高い金属音が響く。

「そうですねぇ、悪趣味とでも言いましょうか」

言いながら逆の手で持った別の短剣をハスタに向かって突く。ハスタは待っていましたと言わんばかりに槍を反転させて柄の方でその短剣を弾いた。

「なんだいセト公、やきもちなら美味しく頂くぜ?」

「まさか。男のやきもちは醜いだけで美味しくありません。まあ、一部の淑女からは歓迎されるでしょうがね」

会話も弾むが、その最中金属音も持続的に響くのではたから見ればかなり物騒だろう。しかしまあ、その合間に飛んでくる弾丸も二人で交互に叩き落とすものだから、敵の軍人もたまった物ではない。

「アイツ、ヒュプノスだ」

「はい?」

「別にぃワタクシメの前世の話でやーんす」

「ああ、前世は槍だったんでしたっけ?」

「そそ、戦場の血肉を吸い尽くす魔槍デュランダルぅふうううかっくいいいいいい」

「本当にそう思ってますか?」

「いえ、とんだ厨二病かと」

「ぶ」

急な本気の声のトーンに笑いが込み上げた。というか吹き出してしまった。
さてさて、この後どうなる事やら。またも飛んできた斬撃を振り払いながら先の事を考えた。

(もうそろそろ、二人に会えたら良いんだけど)


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